Book壱
□好き。
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「…貴方は僕の事好きだよね」
「…は?」
屋上。
見上げた空が眩しい程青く、雲雀は目を細めた。
「…何言ってんだよ…」
ふい、と獄寺は雲雀から顔を背けた。
雲雀は、
(…確かな物なんてない)
と心の中で呟いた。
3限めのチャイムが鳴る。暫くの沈黙を破ったのは、獄寺だった。
「…勘違いすんな」
掠れた声で獄寺は言った。
雲雀は獄寺の顔を覗き込む。そのまま近付く二人の唇―――
乾燥しぴりぴりとした獄寺の唇に、雲雀のそれが重なる。
暖かい春の日差しが、沈黙を奏でる。
「…好きじゃない奴にこんな事させねえよ………」
口に手の甲をあてがい、紅潮した頬を隠す様にして獄寺は雲雀を見詰めた。
長く綺麗な睫毛が風に揺れる。
「…好き。」
雲雀がその言葉に一瞬驚き、そして目を細めた。
「…僕もだよ」
End