天辿翼詩〜記憶辿り〜
□舞い降りた少女
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港には多数の船が着く
異国の商人等も、船にのり国に来る
夕刻でもまだ賑やかな港
――――――
「………ん」
布団の中で私は目覚めた
カナカナと蜩の鳴くのが聞こえる
「何処だろ…ここ」
起きるまで前のことは何もかも覚えてない
解るのは自分の名前くらい
身体がギシギシする
起き上がって襖の外に出た
「もう夕刻なんだ」
空は朱に染まっている
サワサワと竹林を通り抜ける風の音が、不思議
「目覚めたか」
不意に声がした
声の方を見ると、男の人がいた
「誰?」
「俺は那須陰春(ナスノカゲハル)。一応この社の当主だ」
「ナスノカゲハルさん?」
「陰春でいい」
「わかった」
陰春は私の傍まで来て、腰掛けた
何だか不思議な感じがする
「私はましろ」
「ましろか。似合う名だな」
クスッと笑う陰春
何か可笑しかったのかな?