不死鳥の騎士団
□A spy
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ブラック邸にやってきて二日目の昼頃、ブラック邸を不在にしていたルーピンが帰ってきて、ムーディとトンクスも立ち寄った。フォーラは久しぶりの面子との話に花を咲かせ、食堂で午後のお茶を楽しんだ。特にルーピンとはダンスパーティーの時の話で盛り上がった。
「あの時は本当にびっくりしました。まさかリーマスさんだなんて思わなかったから……」
「はは、驚かせてすまなかった。我々の敵が多かったから、しっかり変装させてもらったよ。
お陰で奴らの行動を監視することができた。
しかし、フォーラには直ぐに私だとバレてしまったね。ヒントを出しすぎたかな」
ルーピンが楽しそうに笑うと、フォーラも微笑んだ。
「リーマスさんのヒントがなかったら、貴方だと絶対に気づけませんでした。
他にも騎士団のメンバーがいた様子ですけど、どなたがいらしたんですか?」
「私もいたんだよ!」
座っているルーピンの後ろからトンクスがヒョイと現れた。
「それにムーディも一緒だったんだ。二人でかっこよく変装してキメてたから、フォーラにも見て欲しかったなあ。
私だってフォーラに話しかけたかったのに、リーマスだけずるいよ」
「すまない、パーティーの時のフォーラがとっても綺麗だったんで、つい、ね」
「そんな。あの、ありがとうございます。」
フォーラが赤くなって狼狽えていると、トンクスも首を縦に振って頷いた。
「うんうん!良い意味ですっごく目立ってた!
そういえばフォーラ、会わないうちに何だか雰囲気が少し変わったよね?大人っぽくなったっていうか。
今日のその髪飾りも素敵ね」
「そうだね、黄色がよく似合う」
「本当ですか?ありがとうございます。
これ、頂き物なんです。とってもお気に入りで。」
「そうなんだ〜!うわーっいいね、花のプレゼントなんて素敵だよね。
そういえば、パーティーの時にカッコいい男の子から薔薇の花束も貰ってたよね?」
「えっ!どうしてそれを……」
「私、バッチリ見ちゃったんだ。
彼は好意の塊みたいな人だね。フォーラにメロメロだったじゃない」
トンクスが「このこの〜」とでも言うようにフォーラの脇腹を小突いた。すると、恋愛トークを聞きつけたハーマイオニーとジニーが知らぬ間に会話の輪に加わってはしゃいでいた。そこから少し離れたところでは、テーブルを囲んでいた男子生徒達が何となくこちらの会話に耳を傾けているような気がした。加えてルーピンが何処か不安げで複雑そうな表情でこちらを見て来たものだから、フォーラは恥ずかしさのあまり身をすくめた。
「そんな、アレクシスは友人として花をプレゼントしてくれただけで……。」
「えっ?でも彼、ばっちり『フォーラが好きだ』って言ってたじゃない」
「「!?」」
トンクスの発言に周囲の男性陣は固唾を呑んだし、対照的にハーマイオニーとジニーは黄色い声をあげた。フォーラ自身、記憶を辿ってもそんなことを言われた覚えはなかっただけに、これにはパニックになってしまった。
トンクスが続けた。
「まあ、彼が話してたのは外国語だったからね。私、任務の関係で翻訳魔法を使ってたんだ。
ほら、敵が外国語で情報交換してても分かるようにする為にね」
フォーラはアレクシスがパーティーの帰り際に恐らくブルガリア語と思しき言葉で何か言っていたのを思い出した。トンクスが言っているのはあの時のことに違いない。
「そうだったんですか。私、彼はてっきり別のことを言っていたのかと思っていました。」
「もしかしてフォーラと彼は両想いだったりして?」
トンクスは期待を込めて質問したが、勿論フォーラは慌てて首を横に振って否定した。
「そんな。彼は大事なお友達ですよ!」
「ふうん?そっか。てっきりフォーラは満更でもないんじゃないかと思ったのに。残念だなあ。
あっ、そういえばすっかり忘れてた事があったわ。
パーティーの日、偵察でカメラを持って行ったの。その時敵の顔写真を隠し撮りしたついでに、フォーラの写真も何枚か撮っておいたんだ。
写真なんて滅多に撮ることもないし、良かったらどう?結構綺麗に撮れてると思うんだけど」
数枚の写真をトンクスがテーブルに並べた。そこにはどれもネイビーのマーメイドドレスを着たフォーラが写っており、写真の中で動く彼女が楽しげに誰かと話しているのが見て取れた。アレクシスと笑っていたり、死喰い人のルシウスやノット氏と一緒に写っている物や、被写体が彼女一人の写真もある。
しかしその中で一枚だけフォーラの表情がどこか固いものがあり、彼女は思わず目を留めた。それはドラコと一緒にダンスを踊っている時の写真だった。
「わあ、フォーラとっても綺麗ね」
ジニーが写真を見て思わず感嘆の声を漏らした。