不死鳥の騎士団

□A dress made by Maria
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フォーラが実家からクリスマスパーティー開催の連絡を受けてから数日が過ぎ、あっという間にクリスマス休暇の前日となった。五年生達はその間絶え間なく出される宿題に疲弊しきっていただけあって、ようやくやって来た長期休暇に喜ばないわけがなかった。
フォーラも勿論その一人ではあったが、心から休暇を喜べているわけではなかった。実家のクリスマスパーティーには仲違いしているドラコも参加するからだ。今から考えるだけでも憂鬱な気分になってしまう。とはいえそんな事ばかり思ってはいられない。パーティーを機会に、もしかするとドラコとの関係が今より良くなる可能性だって捨てきれないのだから。

フォーラはこの日最後のアンブリッジの授業を受講し終え、友人達と教室の出口に向かった。
今日もやはり彼女達を含めたスリザリン生は皆、彼らのみが実技練習の時間を設けられていることを教室に入った瞬間に思い出した。そして授業後に教室から出るや否やそのことをすっかり忘れてしまったし、それがアンブリッジの魔法であることなど知る由もなかった。しかしそんな中に一人、周りと何処か様子の違う生徒がいた。

「ミスター・マルフォイ、ちょっとよろしいかしら?」

アンブリッジが呼び止めるとドラコは周囲の友人達に挨拶を交わし、アンブリッジに連れられて彼女の自室へと姿を消した。
アンブリッジは仕事机用の椅子に腰を下ろして前のめりになると、机を挟んだ真正面に立つドラコの方を見た。

「あなたの提案を受け入れて正解だったわ」

「というと、つまり?」

ドラコはアンブリッジの発言について詳細を促したが、彼はその提案とやらを忘れたわけではなかった。アンブリッジが答えた。

「城内に、集団でわたくしに反発しようとしている生徒がいる可能性があります。そういった情報が入っているの。それがわたくしや魔法省の悪口を叩く程度なのか、それ以上かは未だ分かりませんけどね」

「そうですか。では今後も引き続き、僕も少しは先生のお役に立てると言うことですね。嬉しいです」
ドラコは微笑むと、その笑みを不敵なものに変えて続けた。
「その中には当然ハリー・ポッターも居ますよね?」

アンブリッジはガマガエルのような口元を弧を描くように横へ伸ばし、ご満悦な表情を浮かべた。ドラコから見ても、彼女が目の前の獲物にありつくのを楽しみに待っているのがありありと分かった。

「ええ、その可能性は高いわね。
何れにせよ、尻尾を掴んで罰する必要があります。あなたや、他のスリザリン生には年明けから色々とお願いすることが増えると思いますよ。何人かは授業の習熟度で既に目星をつけています。
働きに応じてその分ご褒美に加点するつもりですから、よろしくね」

「ええ、もちろんです」

ドラコは素敵な笑顔を見せてそう言うと、アンブリッジの部屋から退出した。そしてその笑顔は彼女の部屋を出たと同時に、彼の表情から消え去ったのだった。


さて、学生たちは待ちに待ったクリスマス休暇を楽しむ為、ロンドンのキングズクロス駅に到着したホグワーツ特急から続々と降り立った。フォーラはコンパートメントで一緒だった友人たちに別れを告げ、いつも両親が待っている場所へと向かった。今日は珍しくメイドのマリアが迎えに来てくれている。手紙では両親が所用で手を離せないと書かれていたが、フォーラはそれが騎士団の用事であることを察した。とはいえ彼女にとっては好都合だ。両親のどちらかが迎えに来れば、マルフォイ家と立ち話をしながらホグワーツ特急の到着を待っていただろう。そうなればドラコを交えて会話が始まってしまうに違いない。

(こんな理由で喜ぶなんてマリアには申し訳ないけれど……。でも、お迎えがマリアだなんて初めてだし、それは間違いなく嬉しいわ。)

「……あ、マリア!」

「お嬢様!お帰りなさいませ」

髪をお団子に結い、他所行きのコートを羽織ったフォーラより少し背の高い女性がこちらに手を振った。側から見ればフォーラの少し歳の離れたお姉さんに見えるくらいの風貌だ。フォーラは人でごった返す中、彼女の元へ駆け寄った。

「ただいま!迎えに来てくれてありがとう。元気にしていた?」

「ええ、もちろんですよ。お嬢様もお元気そうで。
そういえばドラコ様はご一緒ではないのですね?」

「えっ……あ、ええ。そうね。
ねえマリア、それよりも私がいない間、何か変わったことはあった?マリアやお家のみんながどうしていたか知りたいわ。」
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