不死鳥の騎士団

□two faces
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アンブリッジの授業で杖を振り始めて少し経った。スリザリン生は呪文のことを覚えていても、授業でその呪文を習ったという事実を誰も思い出せずにいた。それだから誰もアンブリッジが授業方針を変更したというスクープを他の寮と共有することがなかったし、教師達も含めて何も知ることはなかった。そして、そのような変更がスリザリンの高学年にしか施されなかったということも誰も知らなかった。

ところで五年生達は日々授業と宿題に追われるように過ごしていた。授業の度に教師達からは学年度末の「フクロウ試験」の重要性について耳にタコが出来る程聞かされた。そして毎回山積みの宿題を渡されて教室をぞろぞろと肩を落として出ていく現象がどの寮でも起こっていた。
フォーラもその内の一人だったものの、彼女の目には光が宿っていた。滅入りそうな環境の中、前を向いて気を確かに持つ彼女の姿に何人かの生徒達は何となく驚きと感心の目を向けていた。中でもパンジーとルニーは特にフォーラの根気強さをひしひしと感じていた。
この日の放課後、談話室でフォーラとパンジー、ルニーは机を囲んで宿題に向き合っていた。ルニーが魔法薬学のレポートを終えてふとフォーラの目の前に魔法薬学の教科書が開かれているのを見つけると、突然感嘆と驚きの声をあげた。

「フォーラったら、さっき魔法史のレポートが終わったって言っていたばかりなのにもう次にとりかかってるの?」

フォーラは羊皮紙の1/3程まで羽ペンを走らせながら返事をした。

「ええ、早く片付けて明日の呪文学と薬草学の予習もしてしまわないと。」

「フォーラったらそんなに根を詰めるなんて、もしかしてもう就きたい仕事が決まってるの?」

パンジーの問いかけにフォーラはふと手を止めた。自分が今頑張っているのは、少しでも変身術の練習に充てる時間を作る為と、これから自分の大切な人を守れるようにする為だ。それ以上に何か具体的な将来を夢見ているわけではない。

「何になりたいかは全然決まってないの。でも、何か自分の得意なことでお仕事が出来たら良いなとは思ってるわ。今はそれくらいかな・・。パンジーは?」

フォーラは羽ペンを置きながらそう尋ねると、将来に想像を膨らませて楽しそうに話し始めたパンジーの方へルニーと一緒に耳を傾けた。パンジーのように、今の自分が学校を卒業した後の姿を想像できる日がそのうちやって来るのだろうか。フォーラは漠然とし過ぎた自分の将来像を頭の片隅に追いやったのだった。


翌日の午後、フォーラ達スリザリン生は魔法生物飼育学の授業のために禁じられた森の端にあるハグリッドの小屋まで下り坂の芝生を進んだ。フォーラは今学年に入ってからこの授業を含めグリフィンドールとの合同授業を憂鬱に感じていた。
不意に彼女の後ろからガヤガヤと馬鹿騒ぎする声が聞こえてきた。聞き覚えのある声の中にドラコの声が混じっていることに気付くと、フォーラは彼から離れるように少し足早に坂道を下っていった。
このところドラコが彼の友人達と大きな態度でふざけ合う姿が度々目についた。大広間や室で見かけることもあったし、グリフィンドール生が近くにいる時は特に酷かった。何年も前から互いに歪み合っているものの、以前よりもドラコが随分目に見えて"嫌な"態度を取っているとでも言えば良いだろうか。彼がそうなってしまったのは丁度フォーラとドラコの関係が悪くなってからなのは明らかだ。
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