不死鳥の騎士団

□vague memory
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ホグワーツに戻ってきた日の翌日、フォーラは疲れた表情で友人達に挨拶を交わした。昨晩聞いた余りにもショックな出来事に、中々寝付けなかったのだ。まさか就寝前に通りかかった廊下で、ドラコが誰かに告白されるところに出くわすなんて思いもしなかった。

『僕でよければ』

ドラコの返事が思い出されて、フォーラの胸がゆっくりと締め付けられた。昨年度末にドラコは自分に告白してくれたのに。夜の間、何度かそのことが頭を過っては自分勝手な想いを掻き消すのを彼女は繰り返した。
フォーラはパンジーやルニーに昨夜の出来事を話そうか迷っていたが、それも朝食時の大広間に着けば必要のないことだった。

「ドラコ、おはよう!」

スリザリンの寮テーブルの側にいたドラコに近寄って挨拶するレイブンクローの女子生徒の姿がフォーラ達の目に入った。フォーラはその女子生徒の声に聞き覚えがあったし、それを聞いたのはつい昨日の夜のことだった。
ドラコの至近距離でニコニコ笑う彼女が昨日列車の中で噂していた対象だっただけに、パンジーもルニーも訝しげな様子で目をやっていた。

「おい、あんまり近づくな・・」

ドラコが視線を周囲に走らせると、フォーラ達とバッチリ視線が合ってしまった。彼は急いで視線を外すと、一瞬バツが悪そうな表情をした後で目の前の彼女に挨拶を返した。レイブンクローの彼女は嬉しそうに微笑んだ後、「じゃあね」と彼に手を振って踵を返した。その際彼女は先程ドラコが視線を向けた方向に目を向け、そこにフォーラが居るのをとらえた。
その時、フォーラは視線の先にいる彼女がこちらに向かってまるで勝ち誇ったような表情を向けているのを見た。フォーラの側にいた友人二人は、レイブンクローの女子生徒がご機嫌に自身の寮テーブルに戻って寮生と話し始めるまで、視線を離さなかった。

「「何あの子!」」

パンジーとルニーが互いに目を合わせて同時に言った。プリプリ怒りながら席に着いた二人にフォーラも続いて長椅子に腰掛けた。すると、ドラコの近くにいたスリザリンの同級生が先程の女子生徒について何かあったのかとドラコを問いただしていた。

「付き合ってるって!?」

フォーラ達がいる長テーブルから少し離れた所にいるドラコのあたりから、男子生徒の声がこちらまで聞こえてきた。フォーラとパンジー、ルニーの視線は自然に交わったが、フォーラは力なくニコッと笑って何事もなかったかのようにスクランブルエッグを取り分けた。パンジーが声を荒げた。

「ああもうドラコったら!」

この日の朝の出来事をきっかけに、数日後にはドラコがフォーラではなく別の人と付き合い始めたという噂が一部の生徒の間で瞬く間に広まった。するとそれに比例するかのようにフォーラの周りには以前より彼女に話しかける男子生徒の姿が増えていった。軽い挨拶程度だったり、朝食の席に混ざってお喋りすることもあった。他にも図書室から出るタイミングが偶然一緒で途中まで並んで歩くなんてことも増えた気がする。
そんなある日、フォーラが今年から山のように増えた宿題を図書室で片付け終えて廊下に出ると、最近図書室でよく出会う他寮の同学年の男子生徒が後ろから彼女を追いかけてやって来た。フォーラが脚を止めて呼びかけに振り返ると、彼はほんの少し息を切らしながら「羽ペン、落としたよ」と彼女のそれを差し出した。
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