不死鳥の騎士団

□unusual
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ホグワーツ特急に乗る日があと数日となったこの日の夜、フォーラはシェードの書斎で父親とソファに座って向かい合い、騎士団のことについて話をしているところだった。

「父様、この間の続きの話なのだけど。
どうしても、私も何か騎士団の役に立つことをしたいの。」

この邸に帰ってからというもの、フォーラは一緒に暮らす使用人達に騎士団の事で協力できることはないかと度々尋ねていた。両親も勿論もれなく数日前にフォーラからそのような質問をされたため、「生きてさえいてくれればいいんだよ」と答えていたし、使用人達もフォーラに尋ねられた時は同じ様なことを彼女に伝えていた。
しかしフォーラはそれでは納得出来ず、再び彼に抗議していたのだった。

「シリウスさんの御屋敷では、皆んな騎士団に協力したがっていたけれど、団員の方達から『まだ早すぎる』って叱られていたの。あの時の私はそれどころじゃなくて、今みたいには考えられなかった。

でも、今なら皆んなの気持ちがよく分かるわ。何か少しでもいいから力になれたらって、とっても思っているの・・。」

シェードは何か考え込むように顎に手を当てながら、じっとこちらを見つめていた。父親の真剣に考える様子に、フォーラは多少の期待が押し寄せたーーーもしかしたら、何か自分にも出来そうなことを提案してもらえるかもしれない。
しかし、残念ながらシェードの言葉はフォーラの期待するようなものではなかった。

「すまないが、私からもフォーラに言ってやれることは騎士団のメンバーとなんら変わらないよ。
ただ、強いて言うなら、今のうちにしっかり学校で学んできて欲しいと思っているかな」

するとフォーラはやや不満な様子で尋ねた。

「でも、本当にそれだけでいいのかしら・・?私、もっと何かしなきゃいけない気がして」

物足りなさそうに焦る彼女にシェードは思わず微笑んだ。何日か前まではあんなに落ち込んでいた彼女が、今はこうして元気に自分に意見しているのが嬉しかったのだ。

「フォーラがどれだけ騎士団の力になりたがっているかは良く分かっているとも。
力になりたいのなら、まずは私の言った通りにしてごらん」

フォーラはじっと父親を見つめ、微笑みを崩さない彼にとうとう折れてしまった。

「・・わかったわ、父様。確かに、騎士団が未熟な魔法使いに何かさせるなんて、許すわけものね・・。
困らせてごめんなさい。私、言われた通り大人しく勉強することにするわ。」

「おや、誰が"大人しく"勉強していなさいと言ったのかな?」

シェードが突然そう言ったものだから、フォーラは頭にはてなを浮かべた。するとシェードは本棚に向かって杖を振り、『呼び寄せ呪文』でその中の一冊を手中に収めた。そして彼はそれをフォーラの方へ差し出したではないか。
彼女はそれを訳も分からず受け取ると、自然と表紙に目をやった。そこには『ファントムの覚書』と書かれていて、それが本ではなく手記であることが見て取れた。大きめの分厚いサイズで、表紙の皮が使い込まれて一部が擦り切れている。中をパラパラと捲ると、年季の入った紙に、手書きの文字で何やら魔法に関することばかりが綴られていた。流し見でいくつか目に留まった文字は主に魔法薬学のことが綴られているようだった。材料の名前、調合の手順、その他にはほんの少し呪文についても何か書かれていた。

「父様、これは・・?」

フォーラは手記から顔を上げて父親を見やった。
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