不死鳥の騎士団

□unexpected side
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夏休みに入って1ヶ月程経った頃、フォーラも随分ブラック邸での生活に慣れてきていた。騎士団達は皆忙しくしていたし、モリーや子供達も館の掃除がまだまだ残っており手を焼いていた。ゴミとして棄てられるのは塵や埃に留まらず、シリウスの母親の悪趣味な遺品達も含まれていた。玄関前のシリウスの母親の肖像画も何度か剥がそうと計画されたが、強力な永久粘着術が施されていて断念せざるを得ないと結論づけた。他にはこれまた悪趣味な蛇が彫刻されたロウソク立てや銀食器、大粒のオパールをはめ込んだ怪しいジュエリーケースなど(これを開いたシリウスは中から出てきた瘡蓋粉のせいで片手が瘡蓋だらけになった)、悪趣味で危険と判断されたものは徐々に一掃されていった。
しかし、棄てたはずの物がきちんと全て廃棄されている訳ではなかった。フォーラが掃除を手伝い始めて何日か経った頃にわかったことだが、ブラック家には屋敷しもべ妖精のクリーチャーが住んでいたのだ。屋敷しもべ妖精はその家に奉仕するのが常だが、このクリーチャーはシリウスの母親が死んで以来、屋敷の掃除を随分と怠ってしまったようだった。
彼はひどく垂れ下がった鷲鼻をしていて、大きな耳も垂れ下がっており、体にはボロ切れ一枚を纏っていた。フレッドがシリウスに聞いた話では、クリーチャーはシリウスの母親の肖像画に狂った命令を申しつけられ、それを実行して大奥様にまだ仕えた気でいるとのことだ。

「地下のボイラー室に"巣穴"を作ってそこで暮らしてるってさ。それで俺達が棄てた遺品をこっそりくすねてそこに隠してるんだ。
フォーラがここにやって来た前日だって、シリウスはクリーチャーが棄てた筈のガラクタを持って行くのを叱ってたな」

初めてクリーチャーを見てそれを聞いた時、フォーラはシリウスが随分酷い人だと感じた。だがしもべ妖精擁護派のハーマイオニー以外がクリーチャーではなくシリウスの肩を持つ理由も、日が経つごとに少なからず理解できるようになっていった。クリーチャーは屋敷で過ごす人達には聴こえないとでも思っているのか、随分な悪態をブツブツと呟くのだ。ルーピンのことは半獣と呼ぶし、ウィーズリー家には純血主義に反発しているため『血を裏切る者』、つまり『穢れた血』と同じくらい酷い軽蔑の言葉を放ったり、ハーマイオニーとフォーラのことを勿論『穢れた血』と呼んだ。フォーラのことは時には『親なし』などと言ったりもした。

フォーラが初めてクリーチャーにその言葉を放たれた時、思わず手が止まってしまったのを彼女はよく覚えている。すぐ様近くにいた双子が怒鳴り散らして追い立ててくれたことには感謝したが、心の中では自分の弱さがなければ、クリーチャーの言葉を何も気にすることはなかった筈だとわかっていた。
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