炎のゴブレット

□後書きとおまけ
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いつもサイトにお越しいただきありがとうございます。
更新が本当に遅い中、暖かいお言葉をかけてくださった皆様、何度も読みにいらしてくださった皆様、本当にありがとうございます。

今回は主人公の秘密が明らかとなり、せっかく縮まったドラコとの距離を引き離してしまいました・・。
特にドラコの告白のシーンは、賢者の石を書き始めた時からずっと書きたかったシーンの一つでした。なのでそこを書くときは本当に時間がかかってしまい、セリフ一つにああでもない、こうでもないと悩みました笑

と言いつつ炎のゴブレットは全体的に悩んだのですが、他のシーンで途中まで書きかけて、がっつりボツにしてしまったところがあります。あまりにも長くて勿体無いので・・・笑、今回は後書きに思い切ってそのシーンを貼り付けしてしまおうと思いました。
こんな話もあり得たんだなー、程度に暇つぶしになれば幸いです。


↓のリンクのシーンでのボツネタです。内容は主人公がハリーと出会い、ダンブルドアの部屋に行ってはどうか、と提案する直前部分になります。
主人公はマグル生まれであることを知って、落ち込んでいました。
28話 sorting hat 6ページ後半


皆がホグワーツから離れる日までとうとう片手で数えられるまでになった。この日のフォーラは選択科目のマグル学が突然の休講となって時間を持て余していた。ただ、今は正直授業に出なくていい事にホッとしていた。自分がマグル生まれだと知って改めてこの授業を受けるのは、今の彼女には余りにも酷だった。
自分の友人達は別の選択科目に出ている。フォーラは突然出来てしまった時間をどう過ごそうかと考えた時、ふと湖のほとりが浮かんだ。今は一人、静かな場所で過ごしたい。フォーラはよく悩み事や考え事があるとこの場所を訪れていた。

フォーラが城の中から校庭に一歩踏み出すと、そこには夏の空が広がっていた。授業中ということもあって校庭にはあまり生徒がいなかった。フォーラはそれに少しホッとすると、湖に続く道のりを進んでいった。
湖のそばに立つ、少し曲がった木の幹にもたれるように腰掛ける。頭上に広がる葉は、ちょうど彼女を覆うようにその木陰を芝生に落とし込んでいた。晴れた、夏の午前中だった。



こちらを伺うような表情のジョージがこちらにやってきているところだった。

「!ジョージ」

フォーラは沈んだ気持ちを心の中で一旦払いのけ、いつも通りの微笑みを見せて手を振った。

ジョージはフォーラの表情に少しホッとしながら彼女に近づいた。偶然見かけた彼女がこんなところで一人うずくまっていては、誰だって心配するに決まっている。

「こんなところで、どうしたんだ?」

ジョージはフォーラの隣までやって来て尋ねた。

「あ・・・その、少し、考え事をしていたの。
授業が休講になって。ジョージは?」

「偶然だな。俺もなんだ。
ちょっと暇つぶしに散歩しててさ。


なあフォーラ。よかったら少し話さないか?
えっと、ほら、あと少しで終業日だし」

フォーラはほんの一瞬その提案をどうしようか思案したが、すぐにこくりと頷くと彼を自分の隣の芝生に促した。
こんなところに一人でいるだけでは、結局なんの解決にもならないのはよくわかっていた。だからジョージとたわいの無いことを話せば少しは気が紛れると思ったのだ。

ジョージはなるべくフォーラが一人でいた理由を聞かないよう努めた。こんなところに一人でいるあたり、誰とも話さず一人で考え事をしたかったのかもしれない。きっとドラコのことだという推測もついている。
それを遮ったのだから悩みを打ち明けるよう促すのは野暮というものだ。ただ、自分と話すことで彼女の悩みが少しでも忘れられればと思ったのだ。

「今年度ももう終わりだな」

「そうね。今年度は他校の生徒がやってきて、いつもと違う行事ばかりで・・・。
とても新鮮で、見たことのない生き物や選手の技を見て、新しい友人ができて・・・。
ジョージとも、ダンスを踊ったわね。ふふ、全部が、とても楽しかったわ。」

彼女の笑顔を見ればその言葉が偽りで無いとすぐにわかった。ジョージは先程のうずくまっていた彼女と今の彼女が別に思えて少し不安に思う部分もあったが、正直安心した気持ちの方が大きかった。

しかし、急にフォーラの表情が陰った。

「・・・セドリックがあんなことになってしまったのに、私ったらこんな風に話してしまって・・・。ごめんなさい・・・。」

フォーラはセドリックの事を思い出し、今年の出来事をただ楽しく振り返っていた自分を恥じた。しかしそれをフォローするようにジョージが彼女に微笑みかけた。

「フォーラが謝ることじゃない。誰にもどうしようもなかったんだ。そうだろ?
それに、ディゴリーだって悲しまれるより自分の勇姿を讃えられる方がずっと嬉しいだろうしさ」

フォーラはジョージの言葉に少し戸惑っていた。不安気にジョージを見やると、彼は自信満々に微笑み頷いてくれたではないか。
フォーラはその肯定に少し救われると共に、彼の優しさを素直に受け取っておくことにした。

「そうだといいわね、本当に。」

「ああ、そうに決まってる。

ハッフルパフは良いシーカーを亡くしたよ。奴とはまた一戦交えたかったんだけどな。

今年度のクィディッチはお預けだったから、それも叶わなかった。残念だったよ」

ジョージはふうと大きく短いため息を一つ吐くと、少し真剣になってしまった表情を笑顔に変えた。

「また、来年度だな。今回できなかった分頑張るから、是非応援してくれよ」

フォーラは緩く微笑むと「ええ」と頷いた。

「スリザリンがグリフィンドールと試合をする時以外、ね。」

「そりゃ残念だな。
フォーラにはスリザリン相手でも応援してて欲しかった」

ジョージはその返答を予想してはいたものの惜しそうに言った。

「どうして?敵チームの寮なのに。」

ジョージは一瞬ぎくりと身を固めた後、その質問に対して、自分が彼女を好きだからという答を何とか誤魔化し笑いをしながら違う言葉に言い換えた。とは言え、その言葉も本心以外の何物でもなかった。

「なんて言うか、俺、スリザリン生でこんなに仲良いの、フォーラが初めてなんだ。他の奴は、まあ・・馬が合わないけど、フォーラは違ったからさ」

確かにジョージを含め、グリフィンドール生は他のスリザリン生、例えばドラコやスリザリンのクィディッチメンバーと衝突しているのをよく見かける。

ジョージは少し高揚した気持ちで言葉を続けた。

「何でだろうな、・・ああ、ほら、組み分けの時に帽子が言ってるだろ、スリザリンは狡猾だって。フォーラには悪いけど、俺はあんまりスリザリンのそいうとこが好きじゃなくてさ。

でも、フォーラを見てると狡猾さって言うか、他のスリザリン生と違って、まあ、言い方がよくないかもしれないけど、ずる賢い感じがしないんだよな。純粋っていうかさ」

その言葉にフォーラはピクリと反応した。
他のスリザリン生と違って?いいや、自分は十分にずる賢い筈だ。

「そんなこと・・ないわ。
私だって、ルーピン先生の事があった時・・・、十分、 ずるかったと思うのだけれど。そうでしょう?」

自嘲気味にそう言えば、ジョージは肩をすくめた。

「あれは、俺はフォーラなりの優しさだと思ったけどな」

あれが狡猾でなく優しさだと何故言い切れる?ルーピンにした事の始まりは、自分が彼を好きで、ルーピンを助ける「建前」に隠れて自己欲を満たそうとしていただけだった筈だ。

「ううん、そんなこと・・・。」

フォーラは本心をぐっと噛み殺していつも通りを装った。ジョージは言葉の中に一つも悪気なんて混ぜていないのだから。むしろ褒め言葉として言っているに違いなかった。

「謙遜しなくたっていいさ。
それに、スリザリンは仲間内の結束が高いだろ。だから逆に言えば他の寮とは馴れ合わない。
けど、フォーラはよく俺やハリー達に歩み寄ってくれるし、そういう所が、他のスリザリン生と違うのかもな。
いい意味で、スリザリンらしくないって言うかさ」

「!」

スリザリンらしくない。

その言葉を聞いた瞬間、自分の中で今までずっと抑え込んできた気持ちがプツンと音を立てて切れてしまった。
自分はスリザリンらしくないのだ。それもその筈、純血の両親は自分の本当の両親ではない。そんな自身はマグル生まれで、両親がマグルの生まれが一人もいないスリザリン寮にはどう考えてもいるべきではないのだろう。

「・・・?フォーラ?」

俯いたまま突然何も言わなくなってしまった彼女を不思議に思い、ジョージが声をかける。彼から彼女の表情は伺えなかったが、その肩が震えているのに気づいてもう一度確かめるようにフォーラの名を呼んだ。

「なあ、どうしーーー」

ジョージが言い切る前に、フォーラはその場にすっくと立ち上がった。突然の事にどうしたのかジョージは戸惑いを隠せず驚いた様子だったが、両手を固く握り締めてようやくこちらを見た彼女の瞳を目に入れた時、彼は更に驚きを隠せなかった。

「だったら、」

彼女の瞳からとめどなく溢れる雫は彼女の頬を伝っては落ち、ブラウスや足元の芝生を濡らした。

「私、何処にもいられないじゃない。」

「え・・・」

突然の彼女の涙にジョージは言葉が出なかった。
フォーラは目に溜まった涙を落とすようにぎゅっと瞼を閉じてからすぐに目を開けた。ぼやけた視界が幾分かマシになったフォーラはジョージを見なかった。

「・・・ごめんなさい、私、・・・もう戻らなきゃ。

・・それじゃ・・」

フォーラはそう言うと、涙を拭いながらその場から逃げるように城へ向かって駆け出した。

「えっ!?っ・・・フォーラ!!?」

ジョージは慌てて芝生を削るように立ち上がると、走ってフォーラを追いかけた。

「ちょっと待った。俺、もしかして何か不味いこと・・・っウワッ!」

ジョージが目の前の彼女の手を掴もうとしながらそう言った時、フォーラは杖をサッと取り出し、振り返らないままジョージの足元目掛けて呪文を唱えた。
すると彼を取り囲むように周囲の芝生がボックスウッドの芽に変わったと思うと、それはもの凄いスピードでザッと縦に育ち、彼の背丈程の生垣へと姿を変えていた。生垣はあっと言う間にジョージの行く手を阻んでしまったのだ。

「・・・!」

ジョージは余りに急で完璧な変身術に驚くと共に怯んでしまった。それに加え、生垣が邪魔で杖を上手く振ることができない。ようやくなんとか生垣を呪文で切り刻んで視界が開けた時には、残念ながらもうフォーラの姿はなかった。

「フォーラ・・」

(俺・・・、フォーラの事を元気付ける筈が、なのに何やってるんだ。まだ遠くへは行ってない筈だよな。急いで探し出して、謝らないと・・・)

ジョージは脚を再び速め、城の玄関ホールを目指した。しかしふいに彼は芝生を踏みしめるスピードを落とし、遂にはその場に立ち止まってしまった。

(俺が褒めたつもりでも、そりゃ、自分が所属してる寮の性格「らしくない」なんて、いい気がしなかったかもしれない。フォーラはきっとその事で怒ったんだろう。

・・・けど、『何処にもいられない』って、・・一体どういう事だ?何もそこまで言ったわけじゃ・・)

フォーラはドラコに想いを打ち明けられなくて落ち込んでいるとばかり思っていた。しかし彼女の様子はそれだけとは言い難い何かを感じさせた。
一体、彼女の身に何があったのだろう?とにかく今はフォーラを見つけなければ。話はそれからだとジョージは先を急いだのだった。
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