炎のゴブレット

□sorting hat
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フォーラは今、スリザリンの談話室に繋がる扉の前にいた。スネイプからは夕食まで彼の部屋にいればいい、無理に直ぐ談話室に行く必要は無いと言われた。しかしフォーラはそれを断った。何時スリザリンの仲間の元へ戻ろうが、自分の気持ちの余裕の無さは変わらないと思った。


扉の前で心臓がバクバクと音を立てている。この扉を抜けた先に、いつものメンバーがいる。彼らは純血主義で、特にドラコがそうだ。彼女の友人だけでなく、この寮で過ごしている全員がどちらかというと両親ともマグルの魔法使いを良く思っていない人達ばかりなのだ。そして純粋なマグル生まれは一人もいない。そんな中に今から帰ろうというのだから不安と緊張に駆られないわけがなかった。

「・・・」

(大丈夫・・・大丈夫・・・何も悟られはしないわ。だって、いつもの場所で、いつも通りに過ごすだけだもの・・・)

フォーラは臆病さを掻き消すように、意を決して合言葉を言おうと思い切り息を吸い込んだ。するとおもむろに扉が開き、中から見慣れた人物が出てきたではないか。

「・・フォーラ、どうしたんだ?」

「・・・!!!!!」

不意を突かれて驚いた様子のフォーラにドラコが首を傾げた。いくら勇気を振り絞ってここまで来たとはいえ、いきなり目の前にドラコが現れるなんて思ってもいなかった。あまりにも突然のことにフォーラの心臓は飛び出そうなほどドキリとしてから早鐘を打った。

「フォーラ?」

フォーラは彼の言葉にハッとして何とか言葉を発しようと口を動かした。

「えっ・・・!ええと、その、な、何でもないの!急に扉が開くから、とてもびっくりしてしまって。」

ドラコは「ふうん」と何気ない様子で返事をしながら彼女の手元を見てから視線を戻した。

「そういえば、図書室へ行ってたんだろう?借りて帰ってこないなんて珍しいな」

「えっ、・・・あ、そうなの。ちょうど目当ての本が貸し出し中で、見当たらなくって。少し城の中を散策してから、戻ってきたの。」

フォーラはまだドキドキと音を立てる心臓を気取られないように、いかにもいつも通りの声色を出した。校長室での話を聞いた後だと、その前と比べてすっかりドラコの見え方が変わってしまったように思った。何かを少しでも悟られたら一瞬で狩られてしまいそうな・・・そんなイメージに怯えている自分がいた。自分から話さない限り、マグル生まれであることがバレる筈はないというのに。

「そうか、何か面白いものでもあったか?」

「ううん、残念ながら・・・。
ドラコはこれからどこかへ行くの?」

ただ、ドラコが自分の大好きなドラコであることは変わらなかった。しかし沢山の感情がそこにチラついて、全てを台無しにしてしまっているのは間違いなかった。胸が、くるしい。

ドラコはフォーラの問いかけに「ああ」と一瞬目線を外して答えた。

「少し梟小屋に用事がある。父上に手紙の返事を出すんだ」

ドラコはポケットに入れていた封筒を取り出すとひらひらと軽く振って見せた。
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