炎のゴブレット

□the precious person
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『フォーラへ

手紙ありがとう。仕事は順調だよ。度々良くない事態に巻き込まれることもあるけれどね。

君も学校生活を楽しんでいるようでなによりだ。他校の生徒との時間を大切にするんだよ。
それから、黒い犬については君の言うとおり、もしかしたらホグズミードに住み着いているのかもしれないね。僕もフォーラのように満月の時以外も動物の言葉がわかれば面白いのに。

ところで今の職場になってから、学校にいたときスネイプ先生に作ってもらっていた薬を魔法省の人狼支援課から定期的に支給してもらえるようになったんだ。おかげで満月の日は随分楽になったよ。

今学期もあと少しだ。もうすぐ学年末試験で気が重いかもしれないけれど、それが終われば最後の試合だ。精一杯楽しんで。

リーマス・J・ルーピン』


「・・・」

ルーピンは羊皮紙を滑らせていた羽ペンを机に置いた。フォーラの手紙に書かれていた黒い犬。彼が今ホグズミードに住み着いていることは当の前から知っていた。何故ならルーピンとシリウスは互いに連絡を取り合っていたからだ。そしてシリウスがハリーの側に居るためにホグズミードの村の外れにある岩山の洞窟に身を隠すよう進めたのはダンブルドアだった。シリウスだけでなくルーピンもまた、ダンブルドアと梟便でやりとりをしていたのだ。

ルーピンはダンブルドアやシリウスから今学校で良くないことが度々起こっていると連絡を受けていた。主に闇の力が強まりつつあるという内容だ。勿論生徒たちはそんな事を知る由もない。その中でもそのことを知っているのは、何者かに三大魔法学校対抗試合に強制的に参加を余儀無くされたハリーと、その友人達だけだった。
ダンブルドアやその他の一部の大人達はハリーが何者かに仕組まれて競技に参加させられているのは確実だと思っていたし(ホグワーツがズルをしたと思っている人を除いて)、ハリーも度々ウォルデモートが力をつけようと企む”夢”を見ていた。これは単なる夢などではなく、実際に起こったことを彼に伝えていたし、ハリー自身もそうだと確信していた。

学校に危険が迫っているそんな中でルーピンは何もできずにいる自分が悔しかったし、自分だけでなく他の大人達も今のところは傍観するしかない状況にもイライラした。
何より自分を慕ってくれて、こうして手紙まで寄越してくれる生徒に本当の事を打ち明けられないもどかしさもその原因の一つだったかもしれない。
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