炎のゴブレット

□primerose:second volume
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それからの二人は裏路地を進んだり、大通りに戻ったりしてホグズミードを散策した。別のお洒落なお店を見つけても、小道を進んだ先が行き止まりでも、何処へ行っても彼女たちは楽しかった。
そんな中でフォーラが一番嬉しくて驚いたことは、二人の小腹が空いてきた頃に起こった。

「一度、三本の箒にでも行かないか?」

路地裏のアンティーク洋品店から出るなりドラコが言った。フォーラはその提案に頷いた。

「ええ、そうね。
今日はちょっとだけ、ホグズミードを探検しているから・・・せっかくだし、バタービール以外を、注文しようかしら。
飲んだことのない物が、まだ沢山あるもの。」

二人並んで大通りを目指す。ドラコはまるで冒険家の気分を味わっているかのようなフォーラにクックッと笑った。

「?どうか、したの?」

フォーラが不思議そうにドラコの顔を覗き込むと、彼は「いいや」とまだ笑ったまま答えた。

「フォーラが随分と楽しそうだっから。そんなにはしゃぐのも珍しくて、思わずな」

フォーラは無意識にその様に振舞ってしまったことにハッとして思わず下を向いた。今の彼の言葉できっと自分の顔は恥ずかしさに赤くなっているに違いなかった。そんな顔を彼に見られるのはーーー

「!」

それは丁度大通りに入る時だった。俯いたフォーラの手をドラコが握ったのだ。フォーラは驚いてまだ赤い顔のままパッと顔を上げた。
ーーーするとドラコの横顔も赤みを帯びているように見えた。

「・・人も多いし、そんな風に下を向いて、またさっきみたいに転ばれでもしたら僕が困るだろう」

息が詰まって力を入れないと第一声が上手く発せられない。

「あ、ありがとう・・。」

・・ドラコは本当にそれだけなのだろうか。迷惑ぶってはいるが自分を心配しているからこうして手を取ってくれている、本当にただそれだけなのだろうか?
もしかしたらーーーーもし、彼が今少しでも恥ずかしがっていて、それでも手を繋いでくれているのならーーー。

(・・・そんなこと、あり得るのかしら・・。
今までずっと、幼馴染だったのに?)

それは自分にも当てはまる言葉だったが、彼女にはそこまで考えられる余裕がなかった。ドラコ同様、彼女もまた幼馴染であることが一歩踏み出す妨げをしていた。相手がそれ以上を望んでいなければ、悪い意味でもうただの幼馴染とは思ってもらえなくなる。

・・ただ、もし仮に彼が自分を意識してくれているのだとすればーーーきっと嬉しくてどうにかなってしまうだろう。
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