炎のゴブレット

□primrose:first volume
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「フォーラ!」

「あ、ルニー、パンジー、おまたせ・・!」

ドラコとフォーラがホグズミードへ行く約束をしてからしばらく経った。校庭の日差しが以前に比べ随分と暖かくなってきた今日この頃、午前中の授業を終えた生徒達は皆昼食をとりに大広間へと向かっていた。
ルニーとパンジーと選択授業の違うフォーラは、彼女達を見つけると混み合う長椅子の二人の間に設けられたスペースに身を収めた。

「ありがとう、授業が長引いてしまって」

「いいのよ。ドラコ達はもう一足先に行っちゃったわ。何でもドラコが次の授業の教科書を鞄に入れ忘れたんですって」

パンジーがゴブレットを片手に言った。それを聞いてフォーラは「そう、」と返事をしたが、その声色は何となく残念そうな様子だった。
そんな彼女を見て、ルニーもパンジーも近頃のフォーラは随分と・・・いや、以前にも増して可愛くなったと思った。
フォーラが可愛いのは今に始まった事ではないが、それと言うのも彼女が纏うオーラの様な、口では言い表せられない何かが女性から見ても分かるくらい彼女を魅力的にしていた。

強いて挙げるとすればーーー

(恋が人を綺麗にするなんて言ったものだけど、実際のところどうなのかしら?)

ここ最近のフォーラはドラコと話す度に少し恥ずかしそうな、嬉しそうな様子になる。ルニーもパンジーも、確かに出会ったばかりの頃のフォーラとドラコの関係は今と少し違うと思ったし、もしフォーラがドラコを気にかけ始めているとすればーーー今こそドラコが動く時だ。

しかしドラコの想いを知っているからといって、フォーラに彼をどう思っているか尋ねるのは野暮というものだ。ドラコでもフォーラでもない、自分達が彼らの互いへの感情を先に知ってしまうのは二人に失礼だと思った。

((私達に出来る事は、只々見守ることだけね))


その日の放課後、フォーラはパンジーとルニーと共に図書室で課題の参考書を探していた。スネイプが出した週明けに提出する課題に手間取ってのことだ。それぞれが別の場所で手分けして、為になりそうな本を棚に並ぶ背表紙に目を通しては開いていた。

「あの、ファントムさん」

突然の呼びかけにフォーラはパッと振り返った。彼女を呼んだのは他の寮の、おそらく一つ二つ年上の男子生徒だった。



「いいのがあったわ。パンジー、フォーラに伝えにいかなきゃ」

その頃ルニーは良さげな書物を手に取ったところだった。ルニーが近くで本を探していたパンジーに声をかけ、二人はフォーラの姿を探した。

彼女達が次の本棚を曲がろうとした時、ちょうどその向こうからフォーラの声が聞こえた。

「えっと・・・その、お言葉は、すごく嬉しいです。ありがとうございます。
でも・・・お気持ちには、応えられません・・・。ご、ごめんなさい。」

パンジーとルニーは思わず本棚の陰に隠れてお互い顔を見合わせた。
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