炎のゴブレット
□with you: second volume
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「ミス・ファントム、どうかしたのかね」
「はい。・・・スネイプ先生、ダンブルドア先生、メリークリスマス。」
先ずは軽く挨拶を済ませる。この二人は本当に対照的だーーーほっほと楽しそうに笑うダンブルドアに対し、表情一つ変えることなく不機嫌そうなスネイプ。スネイプに至っては何か嫌な予感でも感じているといった顔だ。
「私、セブルスさんをダンスのお誘いに来たんです・・・ご一緒しては、くれませんか?」
その言葉を聞いて途端にスネイプのポーカーフェイスは崩れ去り驚きと疑いに満ちたものへと変わった。
「ほう!それはそれはセブルス、お主がこんなにも生徒から慕われておるとは知らなんだ。大いに結構、結構!是非行って来るとよい」
ほっほっほと冗談交じりの皮肉を言いつつ気楽に笑うダンブルドアにスネイプはフォーラの言葉をすぐ様否定した。彼が否定しない訳があるはずがないのだ。
「何を仰るか!
ミス・ファントム、我輩は以前断った筈だ。我輩は踊らん。それから今は気安く名前で呼ぶな。今お前と我輩は生徒と教師。立場をわきまえたまえ」
「いいえ」
スネイプの言葉にフォーラはすぐ首を振った。
「私、スネイプ先生ではなくて、セブルスさんに声をかけにきました。」
つまり私的な用だと言いたいという事をスネイプはすぐ様理解した。理解したが納得は全くいかなかった。
「どちらにせよ我輩は踊らん!何度も言わせるな」
フン、と息を荒げてそう言った彼にフォーラはしゅんと項垂れて見せた。それを見て思わずスネイプが弁解したそうに口を開きかけたのをダンブルドアは見逃さなかった。その動作だけでスネイプが如何に彼女を大事に思っているかがよくわかったようだ。
(親戚の娘と叔父さん、といったところかのう)
クスクスと心の中で笑った後、ダンブルドアは「そんな顔をしても踊らんものは踊らん」と今まさに言おうとしたスネイプに声をかけた。
「セブルス、せっかくお主の教え子ーーーいや、仲良くしているお嬢さんがダンスに誘ってくれておるというのに、それを断ってしまっては失礼じゃ」
「しかし・・・」
スネイプはダンブルドアを見た後、フォーラに視線を移した。彼女は伺うような瞳でこちらを見ている。
全くもってこの娘の挙動は自分が父親にでもなったのではないかと思わせるくらいに甘やかしたくなる。それに・・・
(先程の何人もの誘いを断ってまでわざわざここまで来るとは。とんだ物好きだな)
スネイプは大きくハアとため息をつくと、その場から立ち去ろうとした。フォーラはやはりスネイプに甘えるのは今日は困難だと感じていた。
しかしフォーラが動けずにいると、スネイプは振り返るなり言った。
「何をしている。踊るのなら早く来い。
今流れている曲が終わるまでだ。それ以上は踊らん」
途端にフォーラの顔がパアッと明るくなる。
「・・・はい!」
周囲の生徒たちは本当に驚いていた。あのスネイプがまさかダンスを踊るとは全くもって思っていなかったのだから。しかもその相手が教員ではなく生徒だということも驚きの一つだった。
「おい、あれ・・・」
「スネイプだ。ファントムと一緒だけど・・・」
二人がダンスフロアに足を踏み入れた途端、口々にその様な囁きが飛び交った。皆本人達には聞こえていないつもりだったが、スネイプには丸聞こえだった。