炎のゴブレット
□several "I love you"
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教室には今や誰もいなかった。ロンはそんな状況の中フォーラと二人きりでいることに緊張を隠しきれなかった。
(な、なんでフォーラに声かけちゃったんだろう。すっごく逃げ出したい)
「ロン、急にどうしたの・・・?
ダンスで何か、わからないところでもあった?」
首を傾げてそう尋ねる彼女にロンは何と言えばいいか迷ったが、少し遠回しに本題に入ることにした。
「あ、ウーン・・・違うんだ。実は、ちょっと聞いておきたいことがあって」
「聞いておきたいこと・・・あ、わかったわ!
ダンスのお誘いかしら」
フォーラはふふっと笑いながら茶目っ気たっぷりにそう言った。まさかハーマイオニーと仲の良いロンに限ってそんなことがあるわけないと思ったのだ。
正直に言うとフォーラはそんな冗談を言って、自分で少し自意識過剰だと感じてしまって恥ずかしくなっていた。
一方のロンは彼女の発言が図星だったことに随分度肝を抜かれていた。途端に顔が熱くなるのがわかる。
「ーーーなんて、自惚れてしまったわ。ごめんなさい。
それで、本当は何の話なの・・?」
「っーーー」
ロンはなんと返して良いか分からず言葉を発しようと口を数回開けては閉めた。そしてその後ようやく声が出た。
「は、はは、フォーラもそんな冗談言うんだ。
えっと、話っていうのは、あー、ウン。
・・・あ、あのさ、さっきフォーラがちょっと落ち込んでると思ったから。大丈夫かなと思ったんだ。
それだけ、なんだけど」
ロンは強がって本当の事を言わなかった自分を後悔した。フォーラが冗談を言うものだからロンは彼女を誘うタイミングを完全に失ってしまっていた。
なんとか捻り出した話題もロンが何と無く感じた事を言ったに過ぎない。
ところがそれを聞いたフォーラは少し様子がおかしかった。先程とは違ってやや静かな印象だ。
「・・・フォーラ?」
フォーラはすぐには言葉を発しなかった。少し間を置いてから独り言の様に呟いていた。
「・・・私、確かに最近おかしいわ。
急に胸が痛くなるし・・・」
ロンがあまりに自分の的を射た発言をしたものだから、フォーラは思わずずっと秘めていた気持ちを言ってしまっていた。そんな話をするつもりなんてなかったのに。
それを聞いてロンはフォーラが何か病気にかかっていると思った。誰だってその様な事を聞けばそう思うだろう。