炎のゴブレット

□Shall we dance?
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それから数日後。大広間でいつも通り朝食を摂っていた時のことだった。
いつも通りフクロウ便の群れが大広間にやってきて、いつも通りフクロウ達は主人や受け渡し人に新聞や手紙を正確に届けた。
そんな中、なにやらいつも通りでない荷物がやってきた。

長方形の4辺どこも腕を少し広げたくらいある薄い箱を、フクロウが4羽がかりで運んできたのだ。
フォーラは漠然と珍しく大きな荷物だと眺めていた訳だが、まさかそれが自分の方へやって来るとは一つも思っていなかった。

「あれ、こっちにこない?」

ルニーの声でそれに気がついた。その荷物は確実にこちらへ向かっていた。

「えっ、あ、本当だわ・・・わっ、ど、どうしよう、テーブルは空いてないの・・・!」

ルニーに返事をしている間に気がつけばその荷物はフォーラの目の前のテーブルにフワフワと漂っており、今にもフクロウ達が荷物を手放そうとしていた。


「・・・!」

フクロウの足から荷物が放された。なんとか間一髪食事の上に荷物が落ちる寸前にフォーラはそれを両手で支えた。
すると一羽のフクロウがフォーラに向かって手紙のくくり付けられた片脚を突き出してきたではないか。

膝の上に置くには少し大きすぎる箱をフォーラは無理矢理抱えて手紙を外した。

「そんなに大きな荷物、中身は何なのかしら?」

ルニーが少し好奇心の混じった声で言う。しかしフォーラは差出人の名前を見て箱の中身が何なのか直感的に察知した。

『親愛なるお嬢様へ

お嬢様、お元気ですか?マリアはごご主人様や奥様、他のメイド達と共にいつも通り楽しく過ごしております。

さて、お嬢様にと繕っていたドレスが出来上がりました。お渡しが遅くなり申し訳ございません。
随分前に出来上がってはいたのですが、お嬢様に着ていただく事を思うと時間を見つけては勝手に手が手直しを始めていました。』

(本当にお裁縫が好きなんだから・・・)

『奥様にいい加減趣味をこじらせるのはやめるよう言われてしまいましたので、郵送いたします。

冬でも暖かいよう素材はベルベットを使用いたしました。我ながら優しい光沢を活かした良い物に仕上がったと思いますわ。

自画自賛はこの辺にしておきますが、お嬢様がこのドレスを着て、是非マリアに写真をお送りくださる事を楽しみにしております。

それでは。

マリア・カールトン』
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