炎のゴブレット

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翌日。フォーラ達はこの週末は何時もより随分早く起きた。といってもそれは彼女らだけではない。玄関ホールに上がっていくと20数名の生徒が既にゴブレットの周りをウロウロしていた。
ゴブレットは何時も組分け帽子とセットで出される椅子の上に置かれており、炎をちらつかせていた。椅子の周りには半径3mほどの金色に輝く線が引かれている。

誰か名前を入れただろうか。そう思って側にいたスリザリン生に声をかけようとした時、ダームストラングの生徒全員がゾロゾロと大広間から出てきた。朝食を摂り終えたのだろう。皆手には恐らく名前の書いた紙切れを持っている。
順番に彼らはゴブレットの前に立ち紙を炎の中へ落としていった。

羊皮紙を入れるたび大きくなる炎を眺めていると、視界の端に視線を感じた。ふと気になってそちらを見れば、アレクシスがこちらを見て微笑んでいた。フォーラと目が合うと彼は軽く片手を挙げて言葉なしに手を振り挨拶してきた。

キョロキョロと辺りを見廻した後でそれが自分に向けられたものだと解って驚くと同時に、何人かのホグワーツ生やダームストラング生の目線がアレクシスのせいでこちらを向いているのに気づき顔が熱くなった。
フォーラはどうしようかと迷ったが、返事が返ってくるのを待つかのようにこちらを笑顔のまま見てくる彼に申し訳なくなり、恥ずかしそうに小さく手を振った。
それに満足したかのように彼は満面の笑みを見せた後、ダームストラング生の集団に続いて隣にいた友人と母国語で何か話しながら大広間を出て行ったのだった。

「フォーラ、すっかり気に入られてるじゃない」

ルニーが船に戻っていくダームストラング生の集団を見送りながら言った。フォーラは余計に顔を赤くして首を横に振った。
ちらりとドラコの顔を盗み見ると、彼はパンジーとゴブレットの事で話し込んでいた。フォーラも視線をゴブレットに移す。なんだか妙に自分の心の中が目の前でチラつく火の粉のように感じた。妙にこそばゆくて、奇妙なのだ。


ドラコの顔色を伺った理由はよくわからなかった。何故か反射的にそうなった。ドラコがどうしてだか眉間にシワを寄せているのではと思ったーーーしかしそうではなかった。そのことにフォーラは安心を感じていたが、同時に何だかわからない不安も感じた。

(アレクシスが手を振っているのに、ドラコは気がつかなかったみたい・・)

そこでハッとして我に返った。何故今、少しがっかりしてしまったのか?

(がっかり・・・?いいえ、多分私、ドラコに少し助けて欲しかったから・・・。いつも私のこと、心配してくれていたから、だから・・・。

・・・何を考えているのかしら、私。)

去年は色々自分のことで心配するなと彼女自身が言っていたのに。
一瞬考えたことをすぐ否定してフォーラはルニーとホグワーツからは誰が入れるだろうかという話に移った。正直話には全く集中できていなかった。
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