番外編

□幸せのおすそ分け
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城の廊下を行き交う生徒たちの中に、玄関ホールへ向かうフォーラの姿があった。彼女は薬草学の課題のために温室へ実際に薬草を見に行くところだった。


「あれ、フォーラだ」

彼女を見かけたフレッドが名前を呟くと、隣にいたジョージがピクリと反応してすぐにフレッドの目線の先を追った。

「ホントだ。一人でどこ行くんだろうな」

「なんだ、お前らあのスリザリンの子と知り合いか?」

二人を見て不思議そうにリー・ジョーダンが片眉を吊り上げた。

「ああ、まあちょっとな。ほら、あの猫になれる」

ジョージが答えると、フレッドがニヤリと笑った。

「可愛かっただろ?中々良い子なんだ。それに噂によると結構モテてるらしい」

ジョージがフレッドを軽く睨んでいるのにも気づかずリーは「ふうん」と興味無さげに生返事をした。

「チラッと見えた感じ確かに可愛かったかもしれないけどさ。
でも、よく考えてみろよ。スリザリンだぜ?中身はどんなのかわかったもんじゃないだろ。それにホントに顔が可愛いなら余計にな」

ジョージは一瞬リーに苛立ちを感じたが、彼に何か言ったからといってそんな事は笑のネタを提供するようなものだと気付いた。

小さくため息を吐いたジョージを横目にフレッドは肩を竦めたのだった。




その頃フォーラは玄関ホールを横切り、樫の大きな両開きの扉を何人かのレイブンクローの男子生徒とすれ違いながら通ったところだった。
ふわりと揺れる彼女の髪に彼らは振り返った。

「猫ちゃんだ」

「ホントだ。かっわいいよなあ。俺喋ったことないんだよ。接点無さすぎて」

「あ、僕あるよ」

一人の声にその場にいた友人達は「えっ」と彼に詰め寄った。

「どんなだった?」

「どんなって・・・えーーと、いや、大したことじゃなかったからどうとは言えないんだ。
ただ、落とした羽ペンを拾ってくれたんだよ。
渡された時はちょっとよそよそしかったけど、僕がお礼を言ったらちょっとだけ微笑んでくれたんだ。

彼女が笑ってるのはたまーに見たことがあったけど、近くで見るとちょっと微笑んだだけでもやっぱりかわいかったな」

へへ、と彼はニヤけながら言ったものだから、他の二人は羨ましそうに彼を小突いた。

「いいよなあ。俺も話してみたいなあ。お前もそうだけど、特にマルフォイが羨ましいな。
いつも一緒だろ。」

フォーラを「猫ちゃん」と呼んだ生徒が冗談交じりに言った。
「珍しく一人だったな。今から追いかけて声かけてこようかな・・っておい、冗談だって!睨むなよ!」
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