番外編
□サンタがやってくる。
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最近は雪ばかり降って、寒さが急に酷くなった気がする。あともう幾日か経てばクリスマス。このままいけば、おそらく雪が降り続いてホワイトクリスマスになるだろう。
(だからって、こうも雪ばかりだと寒くてしかたない)
ドラコがほんの少しだけざわついた談話室の暖炉の前で暖をとりながら窓の外の寒空を見上げていた時だ。
「〜♪」
(ん・・・?なんだろう)
ドラコはふいに聞こえてきた音に耳をすました。
「〜♪」
(これは・・・クリスマスソング、だろうな。どこから聞こえるんだ?)
辺りをキョロキョロと見渡す。しかし歌っている人は周りには見当たらない。
(気のせい、か?・・・なんだ、クリスマス前だからって幻聴が聞こえるほど楽しみにしてるとは、僕もまだまだ子供、・・・あれ)
すると、間も無くして女子寮の方からフォーラがおりてきた。
「He's making a list (サンタクロースは長いリストを用意していて)
He's checking it twice (そいつを二度もチェックするから)
He's gonna find out (良い子とそうでない子は)
Who's naughty or nice (ちゃんとわかってるんだ)」
(え・・・、な、フォーラが歌ってたのか!?)
談話室に来た彼女はリズムに合わせて頭を左右に軽く揺らしながら『Santa claus is comin' to town』を口ずさんでいた。
「Santa claus is comi--n' to to--wn」
フォーラの歌に気づいた数人は彼女の普段しないような行動に少し驚いていたが、あまりにも楽しそうな彼女の姿を見て、微笑ましくなってクスクス笑ったあとでまたお喋りに戻ったのだった。
だが、ドラコだけは違った。
(な、・・・・なんだあの可愛いのは!!!!)
あんなフォーラ、今まで一度だって見たことがない。何年か前はそもそもあまり笑ったりしなかったし、最近になってようやく笑うようになったからだろうか、あんなに楽しそうに歌っている。
(フォーラが歌ったとこ、始めて見たな・・・。・・・歌、うまいんだな)
フォーラはどうやら談話室に忘れ物をしたらしく、それを見つけると歌いながら手にとり、ドラコには気づかず、そのまま女子寮へとあがっていった。
ドラコはそこでようやくハッとして、ほうけていた頭をぶんぶんと横に振った。
自分が彼女に見とれていた事に気づき、ドラコは赤面して肘掛け椅子に座り直した。