秘密の部屋
□alive
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就寝時間間際、ドラコは医務室でマダム・ポンフリーに懇願していた。
「お願いです、マンドレイク薬を石になった人達に飲ませるまで、ここに置いてくれませんか」
マダムは何度も駄目だと言って聞かなかった。しかし、ドラコもマダムの話しに耳をかさなかった。どうしても、どうしても目を覚ましたフォーラに一番に逢いたい。そんな願いがあって、いつものドラコはしないようなお願いを彼はしていたのだ。
とうとう就寝時間になり、マダムは遂に折れた。
「わかりました、わかりましたよ。ただし静かにしていなさい。まだ薬を混ぜる作業が残っています」
そう言って彼女は医務室の奥へ急いで戻って行った。ベッドのある部屋に一人残されたドラコは、ゆっくりとフォーラのいるベッドのカーテンを開けた。そこには硬直したままの彼女の姿があった。
(もうすぐ元に戻れる。もうすぐだ。だから……)
フォーラは石になってから度々、自分の肌に暖かいものが触れるのを記憶のどこかに感じていた。実際それが自分に触れていたのか、果たして自分は今どういう状況下にあるのか、今いる場所はどこなのか、そういったことは考えを巡らす前に気づけば頭の中から排除されていった。ただ分かったのは、暖かく温かいものが自分の中に時たま留まって
いたということだった。
今も頬にあたたかい感覚がある。それも、以前よりもはっきりとしたあたたかさ。これは……何だろう。
「、……フォーラ?……や、やった、フォーラ!大丈夫か!?」
フォーラがゆっくりと目を開けると、ぼやけた視界が飛び込んで来た。その後視界がはっきりしてくると、彼女の目の前には自分を覗き込むようにして見つめてくるドラコの不安げで嬉しそうな顔が映し出された。
そして、彼女の頬には彼の手が置かれていた。
「……ドラコ……あなたの手、だったのね。」
「何のことだ?まだ意識がはっきりしないのか?」
ドラコは訳がわからない様子でフォーラを見つめた。頻繁に感じたあのあたたかさは、ドラコが自分の見舞いに来てくれていた証拠だったのだろう。
「ううん……なんでもないの。」
フォーラはにこりと笑って続けた。
「ありがとう。」
彼女の久しぶりの笑顔。ドラコは目頭の熱さと込み上げる感情のせいで少し赤くなって、照れ臭そうに頷いた。