秘密の部屋

□blue tears
1ページ/6ページ

クリスマス休暇が終わってから数週間。
ハリーは談話室で小脇に小さく薄い黒表紙の日記を抱えていた。

「いい加減捨てたらどうだい?」

ロンの呼びかけを無視してハリーはそれに見入っていた。彼はこの間マートルのトイレでこの日記を発見した。一ページ目を開くと「トム・M・リドル」という文字が書かれていた。加えてどうやらそれは五十年前の物であり、そのページ以降は真っ白なページがひたすら続いていた。
ハリーもハーマイオニーも、何かこの日記に仕掛けがあると決め込んで、リドルについていろいろ調べて廻った。そうして分かったのは、リドルはその昔首席で優等生だったということだ。トロフィールームに「特別功労賞」の盾があったのだ。その他にも集めた情報から考えて、二人はただリドルが優秀だったから賞を貰ったとは思えなかった。もしかすると「秘密の部屋」を見つけた人物かもしれない。だから賞を貰ったのでは?二人はそのように思った。
さて、淡い陽光がホグワーツを照らす季節が再び巡ってきた。城の中には僅かに明るいムードが漂いはじめた。ジャスティンと「ほとんど首無しニック」以来、誰も何者かに石にされていなかったのだ。マンドレイクの成長も順調で、マダムポンフリーは喜んでいた。
スリザリンの継承者は腰砕けになったのかも知れない。今や秘密の部屋を開けるのは困難な状況に違いない……ハリーはそう思った。
そう思ったのはハリーだけではなく、ロックハートもだった。

「今度こそ部屋は永久に閉ざされましたよ。
そう、今、学校に必要なのは、気分を盛り上げる事ですよ。まさにこれだ、という考えがあるんですよ…」

彼がマクゴナガルに息着く間もなく話していた事は、バレンタイン当日に分かった。
この日の朝にフォーラが大広間へ入ると、壁という壁がけばけばしい大きなピンクの花で覆われ、おまけに淡いブルーの天井からはハート型の紙吹雪が舞っていたのだ。

「なん、……なんだこれ」

後からやってきたドラコが一瞬息を詰まらせて言った。どうにも今日一日、彼の眉間のシワは取れそうにないかもしれない。

「ドラコはこういうの、嫌い?」

フォーラが尋ねると、ドラコは苦い顔をして「ああ」と返事を返した。

「じゃあ、ドラコにバレンタインのチョコレートをあげようと思っていたけど、いらないわね。」

いたずらっぽくそう言えば、ドラコはバッとこちらを向いて声の出ない様子で口を動かし、ふいと別の方を向いた。

「べ、別に……いらないわけじゃないさ。ただ、この部屋が気に入らないだけで」

フォーラはクスッと笑うと、ドラコと一緒にスリザリンのテーブルへ歩いて行ったのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ