秘密の部屋

□Chiffon cake
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『厨房は地下廊下にあるんだ。そこの絵画の梨をくすぐると厨房への扉が開く。屋敷しもべ妖精が日中働いてるんだぜ。
俺とフレッドはよく中に入って食べ物を振る舞ってもらうよ』

雪合戦の日にジョージが話していたことを頼りに、フォーラは厨房へと向かっていた。朝から入っても大丈夫だろうかと心配しながら、フォーラは玄関ホールから向かって右側にあるドアへと入った。厨房への行き方は教わっていたものの、まだ行った事のないフォーラは正直不安だった。
扉の向こうの石段を下りると、スネイプの地下牢に続く薄暗い廊下とは違い、そこは明々と松明に照らされた広い石の廊下だった。壁には主に食べ物を描いた楽しげな絵が間隔を空けて飾られている。

(梨の絵、梨の絵)

フォーラが辺りをキョロキョロと見渡し、梨の絵画が何処にあるのか探していると、廊下の中程まで着たところに巨大な果物皿の絵があり、その中に緑色の梨はあった。フォーラはその絵に怖々と手を差し延べ、軽く梨の部分をくすぐった。すると梨はくすくす笑いながら身をよじったと思うと、急に緑色のドアの取っ手に変わったではないか。
この一瞬の出来事の間、フォーラは梨が笑った時点で驚いて身体が動かなくなっていた。取っ手を見つめ、いきなりの出来事によって早鐘を打つ自分の胸を落ち着かせるために一つ息を吐いた。それから彼女はようやく取っ手に手をかけたのだった。

ドアを開けて慎重に中へ入ると、天井の高い巨大な部屋があった。丁度真上の階の大広間と同じぐらいの広さだろうか。石壁の前には、ずらりとピカピカの真鍮の鍋やフライパンが山積みになっていて、部屋の奥には大きなレンガの暖炉があった。部屋の真ん中には、大広間の寮テーブルの真下に当たる位置に四つの長テーブルが設置されており、これから朝食を上へ送るのだろう、各寮テーブルに休みで数の少ない生徒の分だけ朝食が並べられていた。
こうしてフォーラが辺りを見回している間、彼女はどうにも屋敷しもべ妖精に声をかけることが出来ずにいた。何故なら少なくとも百匹以上の妖精が働いており、その数に圧倒されていたからだった。彼らは全員がホグワーツの紋章入りキッチンタオルをトーガ風に巻き付けて結んでいた。
屋敷しもべ妖精の会話をちらと耳に入れてみると、この時期は生徒数が少ないが故に普段掃除し難い場所を掃除する計画だとか、今晩のクリスマスディナーについての会話がところどころから聞こえてきた。
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