秘密の部屋

□snowball fight
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とうとう学期が終わり、降り積もった雪と同じぐらい深い静寂が城を包んだ。ハリーにとっては憂鬱どころか安らかな日々であり、ハーマイオニーやウィーズリー兄弟達とグリフィンドール塔を思い通りに騒ぐ事が出来るのは楽しかった。
ロン、フレッド、ジョージ、ジニーは両親と一緒にエジプトにいる兄のビルを訪ねるより、学校に残る方を選んだため、休み中はこちらで過ごすのだ。

一方のスリザリン寮はグリフィンドールに相反して静かだった。寮にいるのはフォーラ、ドラコ、クラッブ、ゴイル、他学年の先輩が数名。
休み中に学校に残るなんていう事は初めてだったために、今のがらんとした寮内はフォーラにとって新鮮だ。いつもと違う寮にそわそわしつつ、フォーラは談話室の片隅でクリスマスプレゼントのカタログをパラパラとめくっていた。

(ドラコへのプレゼントが一番悩んでしまうわ。もう何回目か分からないくらい、プレゼントし合っているもの。
一先ずパンジーとルニーには、このページのどれかにしよう。
クラッブとゴイルは、何がいいのかしら……?お菓子でも焼く?それならもう皆の分を焼けば、ドラコにも、ハーマイオニーにも、フレッドとジョージにも、ハリーにも、ええと、一応ロナルドにも、渡せるし……。
パンジーとルニーは今いないから、梟に焼き菓子を運んでもらうのはちょっと良くないかしら。

それに、スネイプ先生にもプレゼントしなくちゃ。でもあの人、甘いものは好きなの……?

それより、そもそもどこで焼けばいいのかさっぱりだわ。ならこの案はなかったことになってしまうわね)

端からみれば、口数の少ない彼女がこんなにも考え事をしているとは思わないだろう。ぼーっとしながら頭を回転させていたためにフォーラは周りが見えなくなっていたようで、ドラコが男子寮から下りて来て自分の目の前に来ていた事にも全く気がつかなかった。

「!?」

ひょい、と彼女が手にしていたカタログをドラコが拾いあげた時にフォーラはやっとドラコが自分の傍にいるということに気がついた。

「クリスマスプレゼント、か。フォーラは今年は何がいいんだ?」

隣に腰掛けながら聞いてくる彼にぶんぶんと首を振って制する彼女は繰り返し同じ動作をする人形のようだ。

「別に、そんなの、気を使わなくていいの。」

「でも、僕は君に何かプレゼントしたいんだ。それに、そういう君はたった今、僕へのプレゼントを選んでくれていたように見えたけどね」

図星を突かれてフォーラは言い訳の言葉が出てこなかった。

「じ、じゃあ……ドラコの好きなもの。」

ドラコはその様な回答でも十分満足したようで、頷きながら笑顔を見せた。

「わかった、楽しみにしていてくれ」

フォーラは彼のコロコロ変わる表情に何だかホッとした。強引ではあったが、彼の優しさは嬉しいものだ。
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