秘密の部屋

□snake's eyes
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『フォーラへ

まさか秘密の部屋が開かれていたとは。私もリプトニーも大変驚いている。実は以前にも部屋は開かれていたことがあり、その時は生徒が一人死んだ。マグル出身だったらしい。
狙われる生徒は皆マグル生まれで間違いない。だが、それでも私は非常にフォーラの事が心配でしかたがない。今すぐ戻ってこいと言いたいところだが、しかしそれは無理だろう。
幸い今回は前回と違って石になっているだけのようだが、それもどういう事なのか……。もしかすると犯人は、前回捕まった脅威の存在とは異なる性質の"何か"かもしれない。そして今後も石になる被害者は増えるだろう。

さて、私やリプトニーはダンブルドアからの依頼で石になった生徒を治す薬の材料調達を行うことになった。主要材料のマンドレイクはホグワーツで育てているから安心だが、それ以外にも幾つか必要なものがある。それらについてダンブルドアが早急に対応可能な私たちを頼ってくださった。
その関係で私たちは一刻も早く依頼の品を手に入れなければならない。そして残念ながら、それはクリスマス休暇の間も続く見込みだ。これはどうしても外せないことだ。邸の使用人たちにも協力してもらっていて、ほぼ休暇中は邸に誰もいないのだ。

純血の我々ファントム家の一員であるフォーラは、恐らくその何かに襲われる可能性は今のところ低いと踏んでいる。だからどうか許して欲しいのだが、今年はホグワーツで過ごしてほしい。ダンブルドアがフォーラを含む休暇中の生徒の安全を約束してくれているとはいえ、本当なら我が子を優先すべきなのに、本当にすまない。

頼むから絶対一人で行動しないように。ドラコもそちらに残るようだから、彼から離れないように。そうすれば必ず安心だ。
無事を信じているよ

シェード・ファントム』

(父様たちがそんな大役を……。それなら私が帰るわけにはいかないわ。

それにしても、父様ったらあまりにも心配しすぎよ……)

シェードが返事を書いた日の夜、ファントム家から返事の手紙をホグワーツまで運んで来たカイトはヘロヘロに疲れきっていた。スリザリン寮の談話室でカイトの羽を撫でながらソファーに座って手紙を読むフォーラは、父の心配様が思っていたよりオーバーに思えたので何とも言えない気分だった。

(それより、以前も部屋は開かれていたなんて。それに、一人亡くなっている……)
これからもマグル生まれが石になっていくのだろうか。いや、石になるだけで本当に済むのだろうか?それにマグル生まれ以外には本当に何も起こらないのだろうか?
今この学校に起こっていることは、まだ幼いフォーラにはあまりにも突然で大きすぎるものだった。

「フォーラ、その手紙、誰からだい?」
自分の名前を呼ぶ声がしたので振り返ってみると、ドラコがこちらにやって来た。

「父様から。読んで構わないわ」

そう言ってドラコに手紙を差し出すと、彼が紙の上を滑るように目を走らせ、フォーラに手紙を返した。

「ありがとう。
君の家は随分重要なことを任されたんだな。シェードさんもリプトニーさんも魔法薬に随分長けている素晴らしい人たちだから、きっと依頼をやり遂げるだろうね。

それから、父上から以前"部屋"が開かれた時に生徒が死んだっていうのは聞いていたけど、それ以上の事は知っていると怪しまれるからと教えてくれなかった。フォーラの父上もそうみたいだ。

それより、君の父上は心配しすぎだ。フォーラは純血なんだから大丈夫に決まってる」

笑って言ってのけるドラコを見ていると、フォーラの気分は余計に複雑になっていく気がした。
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