秘密の部屋
□fact and grounds
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「−ラコ…、ドラコ……朝よ、ねえ……」
誰かが寝ている自分の身体を揺すっている。瞼は閉じたままだが、意識がはっきりしてきた。
ドラコは一体何なんだと唸りながら目を擦り、声の主を見るために重い瞼をあげた。
「……おはよう、ドラコ。」
ドラコの目の前にはフォーラの姿。彼を起こしていたのは無論彼女だった。
「ーーっ!!?」
ドラコは突然彼女の姿が目に入ったので驚いてしまい、後ずさるようにソファの背もたれにピタッとくっついた。若干身体が痛いのは座って寝ていたせいだろう。
「な、なんだ、フォーラか。脅かすなよ」
頭をかきながら周りを見渡し、まだ皆起き出していないと気付く。そして一通り談話室を見渡した後で気まずいながらもフォーラに視線を戻すと、ドラコの言葉にしゅんとした様子で少し俯いた彼女が目に入った。
「フォーラ?」
彼が声をかけるとフォーラはドラコの隣に座り直して彼を見た。
「ドラコ、……ごめんなさい」
「え?」
(なんでフォーラが謝ってるんだ?)
脅かすなと言った言い方がそんなにきつかったのだろうか。
「いきなり目の前にいたから驚いただけさ。そんなに謝らなくても」
「違うの、……そうじゃない……」
再びフォーラは俯いてドラコの言葉を否定した。彼女が謝っている理由は彼が言っているような事ではない。しかしドラコは彼女が謝る理由がわからず、心配そうに彼女を見た。そんなドラコの表情にフォーラは少し躊躇ったものの、このまま何も言わないでいても仕方がないと思い口を開いた。
「だって、私、……ドラコに怒っていたけれど…。でも、やり過ぎてしまったかなって。だから……」
何故だかだんだん涙腺が緩み、フォーラの瞳が潤んだ。泣くほどの事でもないはずなのに、自分でも何故こうなるのかはっきりとした理由を考えることはできなかった。そしてそんな様子を見たドラコは慌てて彼女を宥めた。
「お、おい、泣くなよ。そんなの気にしてる訳無いだろ、大丈夫だ」
実際のところ彼はフォーラに受けた仕打ちを結構気にしてはいたが、自分が悪いのだから。まして何も悪くないフォーラが泣き出しそうなのに「大丈夫じゃない」なんてことを言えるはずもない。