秘密の部屋
□consider
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ドラコとフォーラが言葉を交わさなくなってからというもの、次の日もそのまた次の日も二人が話すことはなかった。パンジーとルニーはそんな二人の様子を心配していたが、二人では押しても引いてもどうにもならなかった。
この日、フォーラは魔法薬学の授業終了後にスネイプから仕事を頼まれた。夕食後に魔法薬学のレポートを回収して自室まで提出しに来いというものだ。スネイプはここ二、三日フォーラに元気が無いのを分かっていた。理由は聞かないにしろ、自寮の生徒でもあり、知り合いの娘でもある少々周りの生徒より付き合いの長い彼女が心配で"仕方なく"声をかけたのだ。
夕食後、レポートを回収したフォーラはスネイプの自室へと向かった。暗い廊下をいくつも曲がり、もう一つ角を曲がったその時、彼女は別の道から現れた誰かとばったり出会った。その人の顔は廊下にある松明の御蔭ですぐにわかった。
「ネビル……?」
どきりとしてネビルは抱えていた洋皮紙をバラバラと床に落としてしまった。彼は松明の明かりしかない廊下から聞こえた声に怯えながらゆっくりこちらを見た。声の主がフォーラだとわかった途端ネビルから怯えの表情は消え去り、そのかわりに顔が真っ赤になった。彼にとって救いだったのは松明の赤色が彼の顔色を隠してくれたことだった。
「や、やあ、フォーラ……!」
ネビルはおどおどしながらも何とか挨拶した。フォーラは彼に同じく挨拶を返すと、彼が落とした洋皮紙を拾うために身を屈めた。
「あ、ごめん!」
ネビルも急いで洋皮紙を拾い集めた。フォーラが今自分の目の前にいる。彼はそう思っただけで今までにないくらい自分がドキドキしているのがわかった。
「−ーあ」
最後の洋皮紙を拾おうとそれに触れたフォーラの手の上に、同じく洋皮紙を拾おうとしたネビルの手が重なった。途端にネビルはまた顔を赤くしてすぐに手を離し、「ご、ごめん!」と焦りながら謝った。
「?、ううん、大丈夫よ?」
どうしてそんなに焦るのだろうとフォーラは首を傾げ、集め終えた洋皮紙を彼に手渡した。
「ありがとう」
「ううん、いいの。
……もしかして、ネビルはスネイプ先生の所に行くの?」
「あ、うん、そうだよ。フォーラもなの?」
お互いの行き先が同じだとわかると、二人は一緒にスネイプの自室へ向かったのだった。