秘密の部屋
□"Why do you say such a thing?"
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新学期初の授業日から二日後、この日の最後の授業が終わった。フォーラは図書室で本を借り終え、今からスリザリン寮へ戻るところだ。彼女が小脇に二、三冊 冊の本を抱えて少しばかり早足になりながら人気の無い廊下を歩いていると、廊下の角まで来た所で死角からやって来た生徒と突然鉢合わせしてしまった。
「……っあ、ご、ごめんなさい。」
フォーラは咄嗟に謝ったせいで勢い余って本を一冊床に落としてしまった。
「いえ、こっちこそごめんなさい!
あら、あなたは確かファントムさんだったかしら」
フォーラが出会ったのはハーマイオニーだった。二人共、共に一年生の時に三頭犬に遭遇する等の危険な目に遭ったこともあるし、幾度も相手を廊下や授業で見たことはあった。しかし今まで一度もきちんと話したと言えるほど話したことは無く、お互いの事をよく知らない。
「ええ、私、フォーラ・ファントムよ。」
「ああ、よかった。間違えてたらどうしようかと思ったわ。
あら、本が落ちてるじゃない。はいこれ、あなたのでしょう?」
ハーマイオニーはフォーラが落とした本を拾いあげて彼女に渡した。フォーラはぎこちなく礼を言った。
「あ、ありがとう……。ええと、グレンジャーさん?」
フォーラははたして彼女をハーマイオニーと呼んでいいのか迷い、咄嗟に苗字で呼びかけた。
「ああ、私の名前知ってたのね、嬉しいわ!
あ、ハーマイオニーで構わないわよ」
微笑みながら言う彼女にフォーラは少し気恥ずかしくなった。やはり幾度も見かけた事があると言ってもフォーラにとってハーマイオニーが初対面に近しいのは拭い去れなかったようで、彼女の人見知りは健在だとわかる。
「あ、あの、それじゃあ私も……。フォーラでいいの。ファントムじゃなくて、よければ名前で呼んでもらえると嬉しい。」
「あら、ありがとう!フォーラでいいのね?」
フォーラは頷き、少し笑った。
「よろしく、ハーマイオニー」
フォーラがどこかぎこちなくそう言ったのもあり、ハーマイオニーは彼女が若干緊張気味だと何となく分かっていたが敢えてそこには触れなかった。
挨拶程度だったのもあって、それから二人はしばらくしないうちに別れを告げて別々の道へ向かって行ったのだった。