秘密の部屋
□my father and his father
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「『ボージン・アンド・バークス』の店で誰に会ったと思う?」
グリンゴッツの階段を上りながら、ハリーがロンとハーマイオニーに問い掛けた。
「マルフォイと父親、それにフォーラなんだ」
遡ること二日前。フォーラは夏休みに入ってすぐドラコから彼の両親が家に遊びに来るよう言っているとの手紙を受け取った。そのため彼女は迷惑でないならとマルフォイ家の屋敷に宿泊することにしたのだ。屋敷は立派で、同じ貴族であるファントム家も敵わないほど広い庭は十分に手入れされていたし、屋内の装飾も煌びやかだった。フォーラはこれまで何度もここを訪れたことがあったが、何度来ても素敵なところだと思った。
フォーラがマルフォイ家の屋敷にお邪魔すると、皆温かく彼女を迎えてくれた。
「よく来た、フォーラ嬢」
「お招きいただき、ありがとうございます。二日ほどよろしくお願いします」
ルシウスとナルシッサに丁寧に挨拶をして、彼女はドラコに部屋へと案内された。
「久しぶりだな、元気そうでよかったよ」
長い廊下を歩きながらドラコが言う。「ドラコも、元気そうね」とフォーラも返し、それから二人は夏休みはどうしていたかを報告しあった。
「私は、父様の手伝いをしていたの。
魔法薬学の研究材料を別けたり……
イモリの尻尾を切ったり、ユニコーンの尻尾の毛を、瓶に詰めたり。」
イモリは気持ち悪かったと付け足せば、ドラコはフォーラがそんな手伝いをしていたのかと驚いていた。
「そんなの、召使にやらせればいいじゃないか」
「メイドさん達は別の用事で忙しいから。それに私がただ、手伝いたかっただけなの。」
フォーラの父は魔法薬学の研究をしている企業人だ。彼が調合して発表された薬品は数多く、魔法界に大いに役に立っている(余談だが、そのためスネイプとの交流も昔から深い)。
ただ、彼の作ったモノの中には厄介な毒物もあるとかないとか噂が絶えない。とは言えそんな父を尊敬しているフォーラは彼のために何かしたかったのだと言う。
「そうか、なら君の父上はさぞ喜んだろうな。
ああ、魔法薬学で思い出したけど、明後日ダイアゴン横丁に行くって事、忘れてないよな」
フォーラが泊まる部屋のドアを開けながらドラコが聞いた。
「ありがとう。
もちろん、忘れてないわ。おじ様が、連れていってくださるんでしょう?」
ドラコから手紙で伝えられた話を思い出しながらフォーラは言った。