アズカバンの囚人
□ups and downs
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それからの日々はあっという間に過ぎてしまったように感じた。
パンジーもルニーもフォーラが失恋したことを随分気にかけてくれていた。
「ほら、ルーピン先生とはまた何処かで遭えるかもしれないし、それにフクロウ便だって出せばいいんだし」
フォーラはパンジー達にはルーピンに黒猫になって会いに行ったことは言わないでいた。
パンジーの言葉に頷いた後で彼女は言った。
「ありがとう・・・。でも、もういいの。私、色々考えたのだけれど、やっぱり言わなくてよかったかもしれないって思ったわ。」
「どうして?」
ルニーが不安そうに聞いてくるものだから、フォーラは笑顔で答えた。
「最初から、ルーピン先生が私のこと、気にかけてくれるはずが無いし、それに・・・。
もし受け入れてもらえても、その後自分が先生とどうかなりたいなんて、考えたことがなかった・・・。
だからきっと、私の中で先生は憧れだったんだ、って。
それに気づくことが出来たから、今はとても元気なの。だから気にしないで。」
少し離れたところで3人の話を聞いていたドラコはあれから数日でフォーラが少し吹っ切れ始めている様子なのに少し安心していた。元気だと言う割に勿論まだ辛い思いをしているであろうことは容易に想像出来たが、フォーラが少しづつ元気になっていくのが嬉しかった。
そんな時にルニーが一度だけドラコの方をちらと見て彼にニヤリと笑って見せた時は少し苛立ったがーーールニーは「チャンスね」と言わんばかりの様子だったからだーーー、彼女の思うとおり自分でもチャンスが巡ってきたことに少しの期待を持てて以前よりも自分が落ち着いている事に気がついた。
しかしその日の夜にそんな甘い考えは幻想だったと気づかされた。
「フォーラ、猫に変わるあれ、やってみてよ」
「前から君と話してみたいと思ってたんだ。」
「スリザリンのフォーラ・ファントム、あんなに可愛い子がいたなんて知らなかったな」
「馬鹿、彼女は学年でも指折りの美女だぞ。控えめだからあんまり皆知らなかったみたいだけど」
大広間での一件以来、フォーラは校内でちょっとした注目の的だった。彼女の存在に興味を持つ男子生徒が以前よりやや増えたのだ。
廊下でフォーラと歩くたびにそんな噂や彼女への声を聞いてドラコはこれが落ち着いていられるかと思い改めたのだった。
「フォーラにご熱心な生徒がどうにもちらほらいるみたいね、ドラコ?」
パンジーがドラコにそう投げかけると、ドラコは「だからどうしたんだ」と強がった。実際気が気でなかったが強がっていないとやっていられなかった。
フォーラは声をかけられたりする度に慣れない様子で慌てていた。彼女の人見知りは入学以来少しは改善されていたが、やはりまだ治ってはいないようだった。
「フォーラ、だよね?僕はハッフルパフの・・・」
「おい、フォーラに用事か?それとも変身を見せて欲しいだけか?」
翌日にはあまりにもフォーラが慣れない事態に疲れているようだったのでドラコは二人で歩いている時に話しかけてきた男子生徒の言葉を遮ってしまった。
「フォーラは今から僕と大事な用がある。彼女も疲れてるしまた今度にしてくれ」
そう言ってドラコはフォーラの手を引いて廊下をずんずん進んでいった。
「ド、ドラコ・・・?」
一瞬フォーラの頭の中にドラコのあの時の言葉が浮かんだ。
『僕じゃダメか?』
途端に顔がかあっと赤くなるのを自分で感じた。フォーラはドラコの後ろを手を握られたまま着いていきながら頭をぶんぶん振った。
曲がり角を曲がってすぐのところでドラコは手を離した。
「最近話しかけられてばかりで疲れてただろう。言わなくてもわかる」
そこまで言われてようやく彼の行動の意味が理解出来た。
(ドラコは、私のこと気遣ってくれているんだわ・・・。なのに私ったら、)