アズカバンの囚人
□good bye
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それからその日のフォーラはずっと自分のベッドにいた。談話室にいては誰かに黒猫に変身してくれと言われるだろうと思ったからだ。
ダンブルドアに助けてもらったお礼を言いにいかなければならないこともわかっていたが、今はその気になれなかった。とりあえず一人で何も考えずに過ごしたかった。
しかし一人になると考えてしまうのはやはり止められなかった。
(やっぱり私、ルーピン先生に嫌われるのは耐えられなかったんだわ。だって、私はあの人に憧れていたもの。
それなのに急に辞めてしまわれるなんて・・・。
でも、きっとこれで会うことも無いと思うと・・・。
・・・そういえば、先生は昨日私が先生の元へ向かったことを覚えているのかしら・・・。)
そこまで考えたところでフォーラは瞼をおろして寝返りをうったのだった。
パンジー達は無理にフォーラを談話室まで降りて来させようとはしなかった。フォーラがルーピンを好きなのはわかっていたし、そのせいで今辛い思いをして一人になりたがっていることも解っていた。
ドラコも何も言わなかったが、彼は妙なモヤモヤを体の中に抱えていた。
(リーマス・ルーピンがいなくなる。これは僕にとって素晴らしくいいニュースだ。なのにどうして僕は素直に喜べないんだ?フォーラの想い人が城を去るんだ。普通の教師が居なくなるのとは訳が違う筈なのに・・・。)
本当は自分でもその理由は十分に理解していた。だがその理由を彼は認めたくなかったのだ。
フォーラが好きなのは自分ではない。ルーピンなのだ。そんな彼の好きなフォーラが今悲しんでいる。なのにそれを喜ぶ事なんて出来ない。
(僕はあいつに何をしてやればいいかも、きっとわかってる・・・。)
翌朝のフォーラは昨日とは打って変わって少し元気があるように見えた。生徒が彼女に変身してくれと頼むのにも快く応じていたし、様子も何時もと変わらなかったのでパンジーとルニーは安心していた。
「フォーラ、昨日の今日だけど元気になって良かったわ。ルーピン先生には挨拶しないの?」
「ええ、いいの。先生も忙しいでしょうし・・・。」
大広間で朝食を摂りながらそんな会話をしていたが、ドラコは教職員テーブルをフォーラがチラリと見たのを見逃さなかった。談話室に彼女が降りてきた時からずっとおかしいと思っていた。彼女が元気な筈がないのだ。今だって何も見ていない風を装っているが、教職員テーブルにルーピンの姿はない。
朝食を食べ終えるまでドラコはあまり何も言わなかった。けれども大広間を出るや否や、彼はフォーラの手を掴んで離さなかった。
「ドラコ、どうしたの・・・?」
「パーキンソン、マッケンジー、僕はフォーラに用がある。先に行っててくれないか」