アズカバンの囚人

□at the night of the full moon
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それから少しして学校中が期末試験に向けてとうとう追い込みを見せ始めた。図書館は毎日人で溢れかえっていたし、夜の談話室も勉強道具を広げて机にかじりつく人が多かった。

ところでフォーラも勉強に励んでいたわけだが、期末試験が近づくと同時に時たま彼女の耳に飛び込んでくる噂話があった。フォーラはそれが最近気になって仕方がなかった。

「闇の魔術に対する防衛術の席は呪われてるから、今年も先生は一年しかいないかもね」

「ルーピン先生なら来年もいてくれるかも。でもあの科目の先生には毎年何かが起こるし・・」

「ルーピン先生、今年でやめちゃうかも。何人かそんな予想を立ててる人がいるわ」

勉強の合間にたまに聞こえてくる生徒たちのルーピンについての会話にフォーラは度々耳が痛くなった。聞きたく無いのに耳に入って来てしまうのだ。


(先生が辞めてしまうなんて話、ただの噂だってわかっているのに・・・。
もし本当にそうなったらと思うと、胸が痛い・・・。私、先生のこと避けているのにおかしな話だけれど。)

先生に真偽を尋ねる機会があれば聞いてみよう。フォーラはそう決めて今は勉強に取り組むことにしたのだった。



「闇の魔術に対する防衛術」の授業の度にフォーラはルーピンに今年いっぱいで辞めてしまう噂が嘘か本当か聞こうとした。しかし、それはできなかった。尋ねようとすればするほどルーピンの前に立つのが怖くなってしまうのだ。
もし本当に今年いっぱいでルーピンが辞めてしまうとなれば、どんな顔をすればいいのかわからない。それを恐れてフォーラは彼の元へ行かなかった。

実際は、ルーピンは来年もこのままいけば「闇の魔術に対する防衛術」の教員を勤めようと思っていた。噂は噂でしかなかったのだが、ルーピンのことで周りが見えなくなってしまうのがフォーラだった。





しかしとうとうルーピンの事で悩んではいられなくなってしまった。学期末テストが始まったのだ。
スリザリンの最初の試験は魔法薬学だった。フォーラは恐らく90%完成に近い物を提出する事が出来た。提出した時のスネイプの顔色はなかなか良いようだったにも思う。
それから卒無く他の試験もこなして次は彼女の得意な変身術だった。試験内容はティーカップをウミガメに変えるというものだ。これは自分でも完璧だと言い切れる出来となった。マクゴナガルからも「素晴らしい!」の一言を戴けた。

「毎回試験や課題を出す度に、どうしてあなたが私の寮生でなかったのかと悔やまれてならないのですよーーー」


そして最後の試験は「闇の魔術に対する防衛術」だった。内容は今まで学んで来たボガートやレッドキャップ、グリンデローなどを退治や回避しつつ進む、所謂障害物競争のようなものを湖で行う試験だった。一風変わったテストに少し不安が襲って来た。何故ならフォーラは「闇の魔術に対する防衛術」が苦手科目の一つだからだ。

そして結果フォーラの出来はどうだったかというと、途中グリンデローに足を引っ張られてどうなることかとおもったが、なんと今までの「闇の魔術に対する防衛術」の試験で一番出来がいいと思えるものになった。他の生徒に比べるとそれ程でもなかったが、フォーラにとっては十分すぎた。
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