アズカバンの囚人

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スリザリン対グリフィンドールのクィディッチ寮杯決勝戦が近づいていた。
ドラコは殆ど毎日グラウンドに向かい、チーム練習をしていた。頻繁に皆で練習を見に行ったりもしたが、今までで一番気合が入っているように見えた。
ついこの間にはスリザリンとグリフィンドールの生徒たちの緊張状態が極限に達し、互いに殴り合いの喧嘩になった。廊下で二つの寮生同士がすれ違えば睨み合っていたし、それほど皆自分の寮に勝って欲しいと思っていた。


そして迎えた試合当日。フォーラ達は試合のよく見える一番上の観客席で試合を見ていた。

解説者のリー・ジョーダンの声が会場に響いている。

『・・・ーーーグリフィンドールは50点差をつけた後にスニッチを取らないと、スリザリンの優勝が確定してしまいます!
ところで皆さんお待ちかねのハリー・ポッターのファイアボルト、ワールドカップの公式箒に認定されたことは有名ですねーーー』

「ジョーダン!箒の解説はやめなさい!」
横でマクゴナガルが叱咤した。

パンジーは不安そうにフォーラの横でずっとそわそわしている。
「ああもう、ドラコ早くスニッチを捕まえないと・・・!50点差になったら大変よ!」

しかし試合が進むに連れて、グリフィンドールとの点差は徐々に開いて来ていた。

(くそっ、スニッチはどこなんだ!?さっきからずっと探してるのに何処にも見当たらない・・・ポッターの奴は今のところスニッチを見た「フリ」しかしない。そうやって僕の時間稼ぎをしてるのはわかってる。

早く見つけないとーーー)

その時、グリフィンドール側の観客席から歓声があがった。ドラコは辺りを見渡した。どうやらとうとう50点差になってしまったようだ。これ以上は本当にまずい。ドラコはぐるぐるとフィールドを廻って目を凝らしたーーー。

ジョーダンの声が会場に響く。
『ついに50点差です!グリフィンドール頑張れ!!いけ!叩け!つぶせ!!
あっと、すみません先生。わかってます、わかってますよ!
さーてスリザリンのシーカー、なかなかスニッチを見つけられません。このままではおいしいーーあ、いや、まずいですね!
あっと、グリフィンドール、ゴールを決めに攻めています!攻める攻める!!』

ハリーは本格的にスニッチを掴みにかかろうとしていた。動きが変わったのだ。こうなってしまうともう時間がない。ドラコは辺りを見渡したーーーー。

「ドラコ!!頑張って・・・!!!」

ドラコは声のした方を振り返った。すぐ側の観客席からフォーラの声がしたからだ。案の定観客席の一番上にはフォーラがいた。そして視界になにか光る物がーーー

(いた!!!)

スニッチはフォーラ達の数メートル頭上、観客席から出っ張った柱の周りをぐるぐる旋回していた。

最早ドラコは柱にぶつかるのも気にせず、急スピードでスニッチに向かって飛んだ。そして、手を伸ばした。ハリーはドラコの数メートル後ろにいた。とても離れているとは言い難い距離だ。

(だけど僕の方が近い。速く、早く掴むんだ、早く!!)

横目にハリーの手がスニッチを掴もうと伸びているのが目に入ってきた。ドラコはもっと手を伸ばそうとしたーーーー


ピーーーーーッという長いホイッスルの後、ドラコは観客席の柱を避けきれず箒ごと横向きにぶつかって一番上の観客のすぐ後ろに崩れ落ちた。ハリーはなんとか避け切ったようだった。

近くにいたフォーラや他の生徒たちはドラコの側まで急いで駆けつけた。一番近くにいたフォーラが倒れているドラコの肩に触れて顔を覗き込んだ。

「ドラコ、しっかりして、ドラコ!大丈夫!?何処か痛む・・・!?」

声を掛けられてのそりと起き上がったドラコは切れた唇から出た血をユニフォームで拭うと、なんとか握り拳を前に差し出し手を開いた。


その時スリザリン側の観客席から大きな歓声があがった。皆ハリーとドラコどちらがスニッチを掴んだのか今までわからなかったのだ。
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