アズカバンの囚人

□their feelings
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さて、クリスマスを終えた一週間後には学校が始まった。久しぶりに会う面々はお互いにクリスマスをどう過ごしたか、何をプレゼントしてもらったか、そのような話に花を咲かせた。
ところで、フォーラにプレゼントをくれた人たちは主に何時ものメンバーだった。彼女はプレゼントを交換した相手と廊下ですれ違った際には、直接その人物にお礼を伝えたのだった(ドラコはフォーラとジョージがお礼を言い合っていた時に、ジョージをやたらと睨んでいた)。
ところでクリスマス前、フォーラはルーピンにプレゼントを贈るか迷っていた。何故ならフォーラにとってルーピンは幾らか特別な存在だが、彼にとっての彼女は、大勢いる生徒の内の一人に過ぎないからだ。

(でも、やっぱり思い切って贈ってしまったわ。勿論ルーピン先生からは、ふくろう便は来なかったけれど……。それは初めから分かっていたから構わないの)

フォーラは純粋に、日頃の感謝をルーピンに伝えたくてプレゼントした。それだけだった。すると学期初めの『闇の魔術に対する防衛術』の授業後に、彼女はルーピンに呼び止められたのだった。

「フォーラ、君に用があるから、少しの間ここに残ってくれないかな?」

フォーラは心臓がどきりとした―――まさか自分の名前が呼ばれると思っていなかったからだ。彼女は瞬く間に頬を赤くして、恥ずかしそうに返事をした。

「は、はい。」

(何のご用かしら……)

フォーラはルーピンにクリスマスプレゼントのお礼を言われるのかもしれないと、そのような可能性を考えた。別にそうでなくとも、自分に対して何かしらの用事があるだけでも十分嬉しいことだったが―――。

「すまない、待たせてしまったね」

ルーピンがようやく教卓を片付け終えた頃には、教室にはフォーラとルーピン以外誰もいなくなっていた。彼は座席で一人待っていたフォーラの傍まで向かった。フォーラの方は、自分の元に近付いてくるルーピンの姿に、心臓が次第に煩さを増していくのを感じていた。そして自分の顔が赤くなっているであろうことも容易に分かった。

「い、いいえ、大丈夫です。これから昼食の時間ですし、まだ時間はあるので……。」

ルーピンはフォーラの快い返答に安堵の表情を見せた。

「すまないね、成るべく早く昼食に向かえるように、手短に済ませるよ。フォーラ、クリスマスは素敵なプレゼントをありがとう。すごく嬉しかったよ」

幾らその様な言葉を予想していたとはいえ、ルーピンに面と向かって笑顔でそう言われてしまうと、フォーラはもう本当に目を逸らしたくなるくらい身体が熱くなった。

「その、あの……。ご迷惑でなくて、よかったです。」

「迷惑だなんてそんなことないよ。それで、私は何も贈れなかったから悪いことをしたと思ってね。何せまさか生徒から―――フォーラからプレゼントされるとは思っていなかったんだ」

ルーピンは頭をかきながら少し照れたようにそう言った。

「だからこれは私からのクリスマスプレゼントだよ。大した物ではないけれど、貰ってくれないかな?」

そう言ってルーピンは小さな包みをローブの内ポケットから取り出すと、フォーラに差し出した。突然の事に彼女は驚き、目の前のプレゼントとルーピンの顔を交互に見た。

「え……。わ、私に、ですか?」

「他に誰がいる?」

ルーピンがクックと笑いながらそのように問いかけた。フォーラはまた顔が熱くなった―――ルーピンに笑われてしまったせいだろうか―――否、彼からお返しの贈り物が差し出されることなど、彼女は全く予想していなかったのだ。彼女はもう一度ルーピンの顔を伺うように見ると、恐る恐るプレゼントを受け取った。

(どうしよう、嬉しすぎるわ)

フォーラはプレゼントをほんの少し見つめた後で、彼の顔をパッと見上げた。そして彼女は赤いままの顔で、本当に眩しい笑顔になった。

「あ、……ありがとうございます!私もすっごく嬉しい!」

「!……そうか、それは良かった。でも、中身は期待しちゃいけないよ。そんなに喜んでもらって申し訳ないが、本当にたいした物ではないんだ」

ルーピンが苦笑しながらそう言ったものだから、フォーラは頭をブンブン振った。
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