アズカバンの囚人

□party dress
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それから両家はそれぞれ別れの挨拶をして、自分たちの帰路についた。ドラコは道中、最後にフォーラが見せた笑顔を思い出して、両親にわからないようにクスリと微笑んだのだった。

さて、フォーラがお屋敷に着くと、まず玄関をくぐって目に飛び込んで来たのはパーティーのために施された家中のクリスマスの装飾だった。やりすぎもせず、綺麗に、本当にうっとりする飾り付けだった。帰宅した初日は邸宅中のクリスマス飾りを落ち着いて楽しむ余裕があったのだが、パーティーまであまり日がないということもあり、翌日からフォーラは幾らか慌ただしくなった。
フォーラがパーティーの準備として最初に与えられた仕事は、家の使用人の中で一番仲の良いメイドのマリアと、一昨年のドレスがまだ着られるか確認することだった。

「流石に背中のファスナーが閉まりませんわ。お嬢様、背も少し伸びられましたし、何よりお胸も一昨年よりも大きくなられてらっしゃるから、やっぱり新しい物を新調なさるべきですね。ああ、腕がなります!」

うふふ、と笑ってそういった彼女にフォーラは自信なさげに苦笑いした。

「あら、心配為さらないでくださいね。パーティーまでには必ず間に合いますよ。私にかかれば完成まで三日とお待たせしませんからね。お裁縫の魔法はお手の物です」

「マリア、私、別にドレスが間に合わない心配はしていないの。あのね……。」

マリアはパーティーで自身の手掛けたドレスを着るフォーラの姿を見るのが楽しみだと言わんばかりに、笑顔でフォーラの方を『何でしょう』と見た。フォーラは結局彼女にされるがまま、採寸を済ませたのだった。そして次はマリアとメイド達の裁縫室でドレスの生地選び。何色がいいだとか、これは素敵だとか、身体に生地をあてては顔が映えるかをチェックした。フォーラは疲れてはいたが、本当に楽しそうにしているマリアの期待に答えるため、そしてドラコに言われたことを思い出し、二人で生地を選んだ。

『フォーラはきっと、何を着ても似合うに決まってる。大丈夫だからな』

「あら?お嬢様、少しお顔が赤いですわ」

フォーラはマリアにそう言われてはっとした。自分の頬を触って確認してみると確かに熱い。

(きっとドラコにあんなこと、言われたからだわ……ああもう!)

「な、何でもないの。」

フォーラはそう答え、照れ隠しするように良さげな生地を手に取り、身体にあてがった。結局ドレスの色は、前はピンクだったというのもあって今度は青基調となった。マリア曰く今回は少しだけ大人っぽくするとのことだ。以前のピンクのドレスもマリアに作ってもらった。今回のも必ず良いものにしますと意気込む彼女に、フォーラは笑顔でお礼を伝える他なかった。

それから少しだけ休暇した後は、母親と一緒にダンスの練習をすることになった。暫く踊っていなかっただろうから、フォーラのステップを確認すると言うのだ。

「フォーラ、やっぱり少し忘れてるわね。たまに学校でドラコとでも踊りなさいな」

母親が冗談めかして言うものだから、フォーラは「もう、そんなこと、学校で誰もしていないのに恥ずかしくってできないわ……!」と口を尖らせながら踊りを続けたのだった。
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