アズカバンの囚人

□do not run away
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一方その頃、ジョージはグリフィンドールの男子寮にある自身のベッドに座ったまま、今にも泣き出しそうなほど心乱れていた。ジョージは隣のベッドに座っているフレッドに弱音を零した。

「俺……絶対嫌われた……ケダモノだと思われた……絶対そうだ」

「確かにそんなことしちまったらな―――あっ」

ジョージはフレッドの言葉にトドメを刺され、とうとう枕の方へ倒れ込んで動かなくなってしまった。

「ジョージ、ごめん!」

ここまで落ち込んでいるジョージをフレッドは殆ど見た記憶がなかっただけに、恐らくジョージが落ちつくまでこれ以上話しかけない方がいいだろうと思った。しかも今ここに自分がいると、何かの拍子にまたジョージの心を抉ってしまいかねない。フレッドは哀れな双子のことが心配だったが、ここはあえてそっとしておいてやることにして、静かに部屋を出たのだった。

ジョージはフレッドが部屋を出たことに気を留めないくらい、先程の自分の行いを懺悔するのに必死だった。

(もう風邪も治ったし、意識もはっきりしてる。それは良かったけどあんな代償を払うくらいなら、薬なんか呑まなきゃよかった。最悪だ……)

ジョージはふと、フォーラが自分に対して憎悪の視線を向ける姿を想像してしまった。

『ジョージったら、最低……っ!!大っ嫌い!』

(うわーっ!!やめてくれ!!!)

フォーラにもしそんなことを言われたらと思うと気が気でなくなり、ジョージは枕にグリグリと顔を押し付けた。そして動きを止めると、深いため息をついたのだった。

(もうきっと、フォーラをあんな真近に見ることも、触れることもできないんだ、絶対そうだ。
……いや、まだそうと決まったわけじゃない。もしかしたらフォーラはちゃんと、俺が平静じゃなかったことを理解してくれている可能性だってある……!)

その日の夕食前、ジョージはフレッドと共に大広間に向かう道すがら、あわよくば偶然大広間の入り口でフォーラに鉢合わせてくれと強く願った。ジョージの中では、もしフォーラに嫌われてしまっていたらという気持ちと、許してくれるかもしれないという期待がひどく混ざり合っていた。ただ、もし許してもらえなかったとしたら―――それを考えると、正直とてつもなくフォーラに会うのが怖いと感じた。
そしてジョージが階段を下り終えて廊下を暫く進んだその時だった。近くの階下に続く階段から、何人かのスリザリン生が上がってくるのが見えたのだ。

「あ……」

その中にフォーラの姿を見つけ、ジョージは思わず声を漏らした。それを聞いてかどうかは分からないが、偶然にも彼女もジョージに気が付いた―――そして、二人の視線がバッチリ重なった。

「!」

フォーラはジョージが何か言いたそうにこちらを見ている状況に、急速に顔が熱を帯びるのを感じた。とてつもなく恥ずかしくなって、彼女は思わず急いで、隣にいたドラコの影にサッと隠れてしまった。

「フォーラ、急にどうしたんだ?」

フォーラがつい先程よりも不自然に縮こまってくっついて来たものだから、ドラコは驚きと共に感じた照れを何とか隠しながらそのように尋ねた。

「な、なんでもないわ!」

フォーラから返って来たのは焦りを帯びた回答だった。彼女が俯いていたものだから、ドラコからはその表情を視認することができなかった。

(き、急にジョージが現れるから……!彼を見たら、予想通りさっきの中庭でのことが凄く思い出されてしまうんだもの……。うう、直視なんてとてもできないわ……)

ジョージはフォーラが自分を避ける様子を目の当たりにして、ショックのあまりその場に固まってしまった。

(う……。フォーラ、本当にごめん……。あんなに顔を赤くして、よっぽど俺にされたことが恥ずかしかったんだろう。何でもっと理性を保てなかったんだ、俺の馬鹿……色々おかしくなってるのは分かってたけど、それでも……!
―――本当はきっと、フォーラだったから、あわよくばと思った自分がいたんだろう……。そんな気持ちがあったのに、避けられたことをショックと思うのはあまりにも都合が良すぎるよな……)
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