賢者の石

□worry
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(まったく、何でウィーズリーの奴なんかと)

ドラコは男子寮の自分のベッドに寝転がって思った。

(……久しぶりにあんな笑顔見たな)

ついさっきの「ありがとう」と言われた時のフォーラの顔を思い出す。ついつい気恥ずかしくて乱暴な言葉を残して男子寮まで来てしまった。でもそんな事もフォーラには解りきっているだろうと思うと余計に落ちつかなかった。
相手がフォーラだからと言うのもある。慣れ親しんだ相手に改まってあんな風に礼を言われるのはむず痒い。だから逆に言えばドラコがフォーラを「恋愛感情として好き」ではなく「幼馴染」としか見ていないというのは明らかだった。





ある日、遂に飛行訓練の日がやって来た。フォーラは勿論乗り気ではなかった。それはルニー・マッケンジーも同じくだった。二人とも、家で箒に乗るのを許可してもらった事がなかったし、そもそも自ら乗りたがりもしたことがなかった。そんな彼女らを見かねてパンジーは大丈夫よと声をかけた。
そしてとうとう午後の授業、飛行訓練の時間が来てしまった。二人にはどうして皆そんなにウキウキしているのか解らなかった。よく晴れた少し風のある外。平坦な芝生の上でその授業は行われた。マダム・フーチという魔女は白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をした飛行術の先生だ。彼女はやって来るなり生徒をさっさと箒のそばに着くよう促した。

「右手を箒の上に突き出して。

そして、『上がれ!』と言う」

皆一斉に「上がれ」と叫んだが、上がった箒は少なかった。無論、フォーラとルニーの箒も上がらなかった側だ。

次にマダム・フーチは箒のまたがり方を教え、箒の握り方を直した。そして笛を吹いたら強く地面を蹴り、2メートル程浮上してから前屈みになって降りるよう指導した。

「1、2のーー」

マダム・フーチがそう言った所で、グリフィンドールのネビル・ロングボトムが笛を吹く前に浮上してしまった。
フーチは戻ってくるよう叫んだが、彼はどんどん浮上してしまう。コントロールが出来ないようだ。そして真っ青になったネビルは、とうとう高いところから真っ逆さまに落ちてしまったのだった。
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