短編

□かまってほしいだけ
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「いつまでお前はそこにいる。さっさと寮に帰らんか」

もう就寝の時間のはずだろう、スネイプは彼の仕事場のソファでくつろぐフォーラに背を向け、仕事に取り組みながらそう言った。

背後から返事が無いことにため息を付き、凝った首をコキコキと二つほど左右に鳴らした後で振り返った彼。



「…………」


ソファにはぐったりと背もたれに倒れこむように座るフォーラの姿。
やや青白い顔をしている彼女にどうして今まで気付かなかったのかと自分自身に疑問をぶつける。

スネイプは虚ろな目をしたフォーラの横に座り、彼女の額や頬をその大きく分厚い手で触れた。


「熱がある。…何故気怠さがあるなどそういった訴えを示さなかったのだ」

彼女に気がつかなかった自分にも非はあるのだが。
ただ、仕事に集中するため夕食が終わった辺りから部屋にやって来たフォーラに「声をかけるな」と言ったのは確かだった。
それに、彼自身、それから一つも振り返らなかった。

「………」


声をかけるなと言った。

…ああ、そういう事か。


「教授の邪魔に…なってしまうから」

やはりそうだった。
しかしだ。それにしてもだ。

「なら何故熱が出る前に寮に戻らなかった」

フォーラはこちらに少し目を向けて微かに笑って言った。

「教授に迷惑…かけたかった、から…」



全くもって意味がわからない。何故邪魔になるからと黙っていたのに迷惑をかけるためにここに留まるのか。


「最近、全然…相手してくれなくて…だから」


構ってほしくて。



その言葉を聞いたスネイプの目が少し動揺した事に、気を確かに持っていないフォーラは気付かなかった。

「…お前は子供か」


「子供、です」


もういい、喋るな。スネイプはそう言うとフォーラを抱き抱え、自室のベッドへと彼女を運んだ。



「…ありがとう、ございます」


薬を飲ませた後、横になった彼女に布団を被せると、フォーラは少し微笑んでそう言った。
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