短編
□冗談、でも本気
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「ん、」
僕にズイッと差し出されたそれは四角い形をしていて、綺麗にラッピングされていた。
「え、何だよ」
「何って、バレンタインのお返し…」
お花くれたでしょ、というフォーラを気付かないうちに穴が空くほど見てしまっていたようだ。
「な、なにか付いてる?」
赤くなりながら自分の頬をペチペチと軽く叩くフォーラ。
何も付いてないさ、でも、そうじゃなくて。
君、今顔が真っ赤なんだ。まさかフォーラがそんな顔するなんて思いもしなかったから、ついつい見入ってしまっていた。
「いや、−…ありがとう」
内心凄く嬉しい。飛び上がりたいくらい嬉しい。
バレンタインにプレゼントした甲斐があった。あれだけ勇気を出して渡したんだ。これくらいの報酬があってもおかしくないだろ?
「フォーラ、顔が真っ赤だぞ。
−…僕に惚れてるんじゃないのか?」
はは、と冗談混じりに言った。するとフォーラはバッと顔をあげてさっきより顔を赤くしたかと思ったら、俯いてしまった。
…おい、何だ今の。自分で言って凄く後悔してたのに。
「は?何言ってんのよ、自惚れないでよね」ぐらいの言葉が返ってくるかと思ったのに。
フォーラの表情にこっちまで真っ赤になったのが判る。
やばい、どうしようか、こんな恥をさらしてしまうなんて。
…とりあえず後ろを向いてみる事にした。何の解決にもならないが、フォーラに真っ赤になった顔を見られずに済むならそれでいい。
………ぎゅ、
「!!?」
フォーラに背を向けたら、後ろから抱き着かれた。
「な、フォーラ!?」
「好きだけど、何か文句ある!?」
怒りながら言うフォーラの顔は多分僕みたいに真っ赤なんだろう。
心臓がドキドキする。−…ああ、背中が熱いな。
「…あるわけないさ。
だってフォーラは僕の大事な…」
大事な…
…詰まった。言葉に詰まってしまった。恥ずかしくてそのあとなんて言える訳無い。
でも最後まで言わなくても、それだけ言えばもうフォーラにも判ったみたいだ。
だって今抱きしめられてる腕の力が、少し強まったんだから。
end