短編
□逃避
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最近、先生に避けられてる。気のせいなんかじゃないの。
「・・・はあ」
魔法薬学の授業中、私は小さなため息をついた。
ちょうど唐辛子の千切りを鍋に放り込んで煮はじめたところだった。
視線の先にはあのスネイプ先生。
どうして彼は私を避けるのだろう。スリザリン生なのに。ちゃんと授業も真面目に受けているのに。
・・・こんなに好きなのに。
それから数十分。授業終了のチャイムが鳴った。
生徒は皆身支度をして次々に教室から出ていく。
でも私はそんなに急いでここから出ていく気にはなれなかった。周りから見ても手際の悪い片付け方で支度をしている。
勿論わざとに決まっている。
しばらくすれば、教室からは私とスネイプ先生以外には誰も居なくなってしまっていた。
これは・・・二人きりになってしまった。今まではめったにこんなこと、なかったのに。
スネイプ先生は教卓で片付けを済ませようとしているところだ。
もう、今しかない気がする。嫌われているのかもしれないけど。今だって彼は急いでここから立ち去ろうとしているのに−−−。
「せ、先生」
無理矢理喉の奥から押し出した言葉。これを言うのにすごく戸惑ったのは彼にはバレバレかもしれない。
スネイプ先生はじろりとこちらを一瞥して、「なんだね」と返事を返した。
「あ・・・・」
何を言いたいのかわからない。
そんな目で見られたら、言葉が出てこない。
「・・・あの、・・・その。」
痺れを切らしたかのように、彼はため息をついた。ああ、ほらもう、怒らせてしまった。
「ミス・フォーラ、我輩は忙しい。用がないなら失礼する」
そう言って教卓から立ち去ろうとしてしまう、彼。また、どこかへ行ってしまう。
私は夢中で叫んだ。
「ま・・・待って!」
振り返る彼。彼の前までかけていく私。
気づけば私はスネイプ先生の服をぎゅっと握って、彼を見つめていた。
「先生、どうして・・・私を避けるのですか?私、何か悪いことをしてしまいましたか?授業も頑張っているし、先生の言うこともきちんと聞いているのに・・・
私、全部、先生のためにやっているのに」
今まで聞きたかったことを言いはじめると、私は止まらなくなっていた。目からは涙が溢れ、告白紛いのことまで口に出してしまった。
私を驚いた目で見つめていたスネイプ先生は、不意に目をそらす。眉間のシワがまた少し深くなったのを見た。
「・・・・私、先生が好きです。だから、避けられるなんて、つらすぎます。」