アズカバンの囚人

□determination of black
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フォーラがジョージと図書室で出会った翌日、彼女はそのことを少々まずいと感じていた。彼女はアニメ―ガスという自分の力をコントロール出来るようになりたいのは勿論だが、みんなを驚かせたいという思いが少なくなかったため、何の練習をしているのか周囲に極力知られたくなかったのだ。
そこでフォーラは、放課後図書室へ出向くのをやめ、この間ハリーと二人で話したひと気の無い踊り場の一角に移動することにした。ここならそうそう人が来ることもないだろう。
ドラコにはいつまでも放課後に一人で何をしているのかと訝しげに聞かれることが偶にあったが、そこは少し濁しつつ本当のことを言っておくしかなかった。でないと彼は本当に心配性だから。

「覚えたい術があるから、練習しているの。出来るようになったら、必ず見せるわ。」

フォーラは友人らを驚かせたいのに加え、脳裏にもう一人対象人物を無意識に思い浮かべていた。アニメ―ガスになれることを知ったら、きっとその人は飛び切りの笑顔でこちらを見てくれるに違いない。

(ルーピン先生、褒めてくださるかしら)

少しの間そんな事を考えた後、フォーラは頭をぶんぶんと横に振り、再び練習に励んだのだった。

グリフィンドール対ハッフルパフのクィデッチ試合が翌日に迫ったある日のこと。この日は『闇の魔術に対する防衛術』の授業があったのだが、フォーラたち生徒が教室に行くと、教壇に立っていたのはルーピンではなかった。スネイプが授業の準備をしていたのだ。

「ルーピン先生はどうしたのかしら?」

ルニーが席につきながら首を傾げてそう言った。フォーラも同じことを思った。いつもこの時間にルーピンに会えるのを楽しみにしていたからだ。
授業が始まると、ルーピンがいない理由はすぐに分かった。ルーピンはどうやら体調が悪く今日は教えることが出来ないらしい。

(ルーピン先生、大丈夫かしら……早く元気になってほしいわ)

フォーラが少し元気なく瞳を伏せたのを、隣にいたドラコは偶然横目にちらりと見た。彼はルーピンがいなくて嬉しい反面、フォーラの寂しそうな横顔を見るのが少々辛くもあった。
先生なんて、好きになってもろくなことがないだろうに。

(僕にすればいいのに)

ドラコはフォーラに向けた視線を外して目の前の黒板に目をやりながら、胸がきゅっと軽く締め付けられそうになるのを堪えたのだった。

「今後の学習予定などあろうと思うが、今回我輩が諸君に教えるのは、『人狼』についてである」

スネイプが教科書のページをまだ習っていない最後の方まで捲ってそう言った。そのためクラスは少々騒めいたものの、生徒たちはそれに従って指定されたページを開いた。
スネイプは人狼が狼とはいくつか違う点を持つこと、人狼を殺す方法などを話していった。

「人狼は満月になると狼となるが、実際危害を加えるのは人に対してのみだ。動物には噛みつかない。これは実際、知り合いの狼人間からもそのように聞いている。更に―――……」

(人狼……。そういえば、お父様が少し前に人狼のお話を誰かとしていたような気がするわ。あれは、そう……確か、まだ私がホグワーツに行く前、セブルスさんが家にいらっしゃった時)

フォーラは昔に父とスネイプが何をしていたのかが気になってしまって、授業どころではなくなっていた。それに加え、何故目の前のスネイプはこのタイミングで、こんなにも後ろのページの勉強をさせるのだろうかとも思った。
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