アズカバンの囚人

□imitation
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それから数日というもの、学校中シリウス・ブラックの話でもちきりだった。どうやって城に入り込んだのか、話に尾ひれがついてどんどん大きくなった。そしてそんな校内の騒めきと共に、天候は着実に悪くなり、暫くの間は激しい雨が降り続いたのだった。

そんなある日のことだ。この日の昼前のスリザリンの授業は変身術だった。フォーラにとって変身術は一番の得意科目と言っても過言ではなかった。
マクゴナガルは教壇に立つと口を開いた。

「今日の授業はアニメーガスについてです。みなさん、教科書の107ページを開いて」

アニメーガスとは人の意識を保ったまま動物に変身できる魔法使いのことを指す。通常、変身術で動物に変身するとその人は自分の意志で元の姿に戻れないのだが、アニメーガスにはそれができる。マクゴナガルもトラ猫に変身できるアニメーガスの一人だ。
マクゴナガルがアニメーガスに関する説明を終えると、彼女が実際に変身して見せるのでよく見ておくよう生徒たちに伝えた。フォーラはそれをワクワクして待った―――。
するとマクゴナガルは杖もなく身一つであっという間にトラ猫に変身し、教壇の上を四つ足でウロウロした後、再び元の人の姿に戻った。これにはクラス中から拍手が起こった。杖を使っていない時点で、誰から見てもこの魔法はそうそう簡単に習得できるものではないと感じさせられるだろう。
フォーラも他の生徒同様、マクゴナガルが変身した途端一気に笑顔になり、彼女に拍手を送ろうとした―――その時だった。先生が猫から人に戻る際、フォーラを妙な目眩が襲い、突如として彼女の頭の中でフラッシュバックが起こったのだ。何とかふらつく身体を椅子の背もたれで支え、誰からもそのことがばれないように耐えたのだが、フォーラの顔色は先程より随分と青くなっていた。
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