アズカバンの囚人

□I can not tell the truth
1ページ/7ページ

さて、フォーラがルーピンから逃げ出した後で、彼女はまた廊下をフラフラと歩いていた。いっそのことこのまま校庭にでも行こうかと思った時、ちょうど廊下の向こう側からスネイプがこちらにやって来るのがわかった。手には何やら薬のようなものが入ったゴブレットを持っている。

「セブルスさん、こんにちは」

フォーラはゴブレットをちらりと見ながら彼に挨拶をした。彼女はスネイプが、何故君はホグズミードへ行かないのかと尋ねるだろうと思った。しかし彼は今朝のフォーラとドラコのやり取りを見ていた一人だったため、そのようなことはなかった。

「あの、それ、一体なんですか?」

フォーラがゴブレットを指差して尋ねた。スネイプは眉根のシワを少し深くした後、やや投げやりに言った。

「これは、ルーピン先生に持っていく薬だ」

スネイプはやたらに『薬』の部分を強調していた。

「えっ、ルーピン先生は、どこかお体が悪いのですか?」

スネイプは何やら意味深に、どこか笑っているようにも見える表情で「ああ、そうだ」と頷いた。それを見てフォーラは少々不安な気持ちにかられた。

(ルーピン先生は、ご病気だったの?それとも、最近患ってしまったのかしら……。)

フォーラはもう一度ゴブレットを見た。

「……?」

フォーラはちらりと見えた液体に何やら妙な違和感を覚えた。匂いといい、色といい、なんとなく見覚えがある。

「我輩はそろそろ行くが」スネイプはそう言ってフォーラの横を通り過ぎる際、またも意味深に言った。「これは、君の父親と我輩で考えたものだ」

スネイプが立ち去る後ろ姿を眺めながら、フォーラは聞き覚えのある言葉に首を傾げた。

「父様とセブルスさんで考えた……?どこかで聞いたような言葉だわ」

父親とスネイプ、その二人に共通するのは魔法薬学の権威であることや、互いが良く知った仲だということだ。

(確か私がまだホグワーツに入学する前に、二人で何かの魔法薬を作ったと、そんな話を聞いた気がするわ)

しかしそれが何だったかフォーラは覚えていなかった。彼女は考えても仕方が無いと切り替えて、そのまま校庭へと向かったのだった。
その頃、スネイプはルーピンの部屋に先程のゴブレットを届け終えていた。部屋にはハリーもおり、ルーピンがそのゴブレットの薬を飲むのを見ていた。ハリーはスネイプが毒でも入れているのではないかと疑っていたのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ