アズカバンの囚人
□Two people of the corridor
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いてもたってもいられなくなったドラコは、喉を通らない朝食に目もくれず、クラッブたちを置いて大広間を出た。フォーラが何処にいるのかは分からなかったが、とにかく足はスリザリンの談話室へと向かっていた。
ドラコが談話室へ飛び込むと女子寮に続く階段の方から、ほんの僅かにパンジーとルニーがフォーラに話しかけている声が聞こえてきた。暫くすると二人が階段を降りて来る音がして、ドラコは彼女らの姿が見えると急いで駆け寄り、二人にフォーラの様子を尋ねた。
「フォーラは、どうしてるんだ」
焦ったように聞く彼に、ルニーは『呆れた』と言わんばかりにため息をついた。
「ダメね。部屋から出たくないって。それに布団に潜っていて、掛け布団を外そうとしないの。随分泣いているみたいだったけど」
狼狽えて目を泳がせるドラコに、ルニーは再びため息をついてから声をかけた。
「今謝ったって、きっとあの子は許してくれないと思うわ。時間を少し置いた方がいいんじゃない?」
「そ、そうか」
「それに。好きなのに嫌いなんて、言っちゃいけないわ。嫉妬も大概にしなきゃ」
このことにパンジーは目を丸くしたし、ドラコの頬は少し赤くなった。パンジーが尋ねた。
「え、ドラコ、それ本当なの?」
「そ、そんなことはどうでもいい!嫉妬なんて、そんな」
語尾が弱まっていくドラコを見て、ルニーは彼が自分の気持ちを自覚していると確信したらしい。
「ちゃんと捕まえておかないと、彼女、ホントに何処かに行っちゃうわよ」
「!……わ、わかってる」
俯き気味でそう言ったドラコに、パンジーはショックを隠しきれないようだった。そんな彼女を見て、ルニーは軽く腕組みした。
(パンジーもパンジーで、大変ね……)
「兎に角、ここにいても埒があかないわ。さっさと朝食を済ませて、ホグズミートに行きましょう。そしてフォーラにたくさんお土産を持って帰りましょう」
その頃大広間では、ドラコたちの喧嘩があった場所から一番近い席―――グリフィンドールの席から見ていたハリーや双子たちが、先程のことについて話しているところだった。
「フォーラ、大丈夫かな」
ジョージが心配そうに言った。ハーマイオニーも、随分珍しい光景に少々落ち着かない様子だった。
「マルフォイが彼女にあんなことを言うなんて。彼、走って追いかけて行ったけど……もしかしてフォーラは、今日はもうホグズミードには行かないんじゃないかしら?だってそんな気分になれると思う?」