アズカバンの囚人
□restart
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フォーラが家に着いてからは、何故彼女がウィーズリー家の近くに倒れていたのかという議論を家族で沢山交わした。フォーラが家を出て以降のことを何も覚えていなかったのもあり、誰か魔法使いや魔女が彼女を拉致しようとしていたのではないかとか、それならどうして道端に彼女は置き去りにされていたのかという話が尽きなかった。
しかし結局答えはフォーラの記憶に頼るしかなく、その頼みの綱がないことには何の解決にもならなかったのだった。
そんなことがフォーラの夏休みのドタバタな思い出の一つとなった。そしてついに彼女がホグワーツ特急に乗るため、キングズ・クロス駅に到着したその日まで話は進む。
フォーラはホグワーツ特急を目前に、両親から念をおされていた。
「ホグズミード行きは許可したけれども、くれぐれもシリウス・ブラックには気をつけるんだよ。夏休みにあんなこともあったし……分かっているね」
フォーラは父親の言葉に何度も頷き、両親にキスをしてとうとう列車に乗り込んだ。彼女は両親に手を振ろうと思い、列車が発車するのを車両の入口で待った。すると誰かがプラットフォームの人混みを掻き分けてこちらに走って来るではないか。そしてそのブロンドヘアの人物はあっという間にフォーラのいる入口に駆け上がってきたのだった。
「……ドラコ!」
薄青いその綺麗な瞳をこちらに向けて微笑んでいるのは、正しくドラコだった。夏休みの間にまた背が少し伸びた気がするのは気のせいでは無いだろう。
「フォーラ、久しぶりだな」
「ええ、そうね。」
ドラコに続いてマルフォイ夫婦がフォーラの両親の隣にやって来た。
「ドラコ、フォーラと仲良くするんだぞ」
ルシウス氏が言葉を投げかけると、ドラコはもちろんと頷いた。そしてお互い元気でと挨拶を交わした時、ちょうど列車が走りだした。二人は互いの両親が列車のカーブで見えなくなるまで手を降り続けたのだった。