賢者の石

□"Is her injury cured!?"
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翌日のスリザリンの授業、一限目はグリフィンドールと合同の魔法薬学だった。この日の授業内容は一年生の授業の中で一番複雑な調合だった。スネイプから液体を絶対に直接触らないよう命令があった。それほど危険なものらしい。
しかしそう言われると異様に緊張してしまうのがネビルだった。彼はフォーラのいる席から通路を挟んだ右隣の席で、細心の注意を払いつつ最後まで玉のような汗をかきながら作業を進めた。彼は仕上げに鍋を火から下ろす際、この緊張から早く解かれたい一心で急いで鍋を持ち上げた。その時、ガシャーンという大きな音をたててネビルの鍋が落ちた。急ぐあまりうっかり手を滑らせてしまったのだ。
その勢いで赤黒い液体が跳ねた。フォーラの方に向かったそれは、彼女の右腕にもろにかかってしまった。

「……っーー!!!」

声にならない叫びを上げ、フォーラはジュッと音を起てた右腕を抑えた。激痛が走る。スネイプが直ぐさま駆け付けた。フォーラに覆い被さるようにして何かを叫んでいるーーー。

フォーラはそこから気をを失った。



目を覚ますと、目の前には天井がうつった。フォーラはベッドに横たわっていた。どうやら医務室のようで、カーテンがフォーラのベッドと他のベッドを仕切っていた。

「……っ!」

右腕が痛い。こんな痛みは感じたことがなかった。火傷のような痛みを発するそれは、包帯でぐるぐる巻きだった。
フォーラは頭に必死でこの時は気付かなかったが、時を同じくしてロンも医務室のベッドに横たわっていた。昨日ドラゴンに噛まれた所が緑色に腫れ上がり、治療せずにはいられない状態になってしまったのだ。
彼はフォーラがスネイプに抱き抱えられて医務室へ運び込まれたのを見た。彼女の腕は酷い火傷を負っており、赤黒くただれていた。

(一体何があったんだろう)

ロンはハッとして頭をぶんぶん振った。

(何で僕が、ファントムの心配なんかしなけりゃならないんだ)

それでも気にした所でどうにもできないのは判りきっているものの、やはり気になるものは気になる。

「っあ……!は、……っ……」

突然、フォーラのベッドから彼女の悲痛な声が聞こえた。マダムのバタバタという足音が聞こえる。思わずロンは上体を起こしたが(そのせいで彼も腕に痛みが走った)、カーテンの向こう側で痛みを堪える彼女に、こんな惨めな状態の自分が出来ることは何もないのだとその時ようやく気付かされた。
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