賢者の石

□keep silent
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「さて、我輩はこれから仕事だ。あまりこんな所に長居しないように」

そう言うとスネイプは来た道と逆の方へと進んで行った。フォーラは彼の言ったことが少し気にかかったが、彼の後ろ姿を廊下の角で消えるまで見つめたのだった。

スネイプが見えなくなった後もフォーラは暫く外を眺めていた。太陽は少し傾いてはいるがまだまだ昼間で比較的高い位置にある。空は青く、やはりスネイプが言った通り外に出るべきかと思った。

とりあえず中庭にでも出てみることにして、そこへ続く渡り廊下へ向かった。するとその途中、角を曲がるところでフォーラは反対側から来た誰かとぶつかりそうになってしまった。

「うわ、びっくりした」

ロンが突然の出来事に声をあげた。

「!あ、ごめんなさい……」

ロンは相手がフォーラだとわかると少し怪訝な顔をした。

「あ、君だったのか。こっちこそごめん」

まさかロンと出くわすとは思っていなかった。フォーラはどちらかと言えばロンにはあまり会いたくない理由がある。それはやはりホグワーツ特急のコンパートメントでの彼の表情が自分を嫌っているように感じていたからだ。現にロンはフォーラをあまり好きではない。

「……あ、えっと……それじゃ、」

自分が臆病なのはよく解っている。ただどうしていいかわからない。だからフォーラはそんなつもりは無いのにロンから逃げるようにその場を後にした。

(もしかしたら今のでまた嫌われたかも)

後から気づいてもしかたがない。そうする以外にフォーラには解らなかったのだからどうしようもなかった。

そしてフォーラと別れた後のロンは案の定腹立たしげに廊下を歩いていた。フォーラの行動が更に誤解を招いていたのだ。

(あんな露骨に嫌がらなくてもいいだろ!)



しばらくしてフォーラは沈んだ様子で寮へと戻って行った。中庭に行く気にはなれなかったのだ。気分は憂鬱だった。人に良く思われないのは悲しい。でもどうしようもない。でもどうにかしたい。そんな想いが彼女の中に生まれていた。

(ロンに嫌われていたとしても、私にはあまり関係は無いけど、でも……。)
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