不死鳥の騎士団

□A dress made by Maria
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マリアはフォーラの様子に違和感を覚えたが、それ以上触れることはしなかった。

「そうですね。では早くお邸に帰らなくては。ここではお話しできないようなこともありますから」

二人は邸へ向かう為、キングズクロス駅から少し離れたところにある寂れた店へ向かった。そこはマグルが寄り付かない程ボロボロで、最早営業している面影はない。店内にはポツンと暖炉が設置されている。そこは魔法使いや魔女が煙突飛行ネットワークを利用する為に魔法省が用意した公共の場所だった。煙突飛行でシリウスのいる場所へ行くのは絶対に避けなければならないが、自宅となればその必要性は皆無だ。

例の店へ向かう道中、フォーラはマリアに学校でのことを尋ねられた。アンブリッジが魔法省からやってきたことや、五年生は宿題が山積みであること、友人達と課題をこなしていることなどを話した。しかしそれらの話題の中に一度もドラコは登場しなかった。フォーラはマリアが当然そのことに気づいていると思ったが、マリアはその点に触れてこなかった。
しかしフォーラは例の店と呼べるか怪しい場所に着く前に、とうとう自らドラコについて口を開いた。

「ねえマリア。私ね……私、ドラコと仲違いしてしまったみたいなの。」

「えっ?」

フォーラは勇気を振り絞った筈だったが、続きを言うのを躊躇ってしまった。それを見たマリアは少しばかり辺りを見まわし、フォーラの言葉を待たずに声をかけた。

「お嬢様、あそこの教会の側に大きな公園があります。寄り道がてら休憩していきませんか?」

フォーラは少し迷ったものの、マリアの提案を受け入れた。今までホグワーツ特急からの帰りに寄り道したことなんて殆ど無かった。しかしフォーラはここから例の暖炉がある場所までそう遠くないことや、家に帰れば二人きりで話す機会が減ってしまうことをマリアが気にしてくれているのだと気づいた。

冬の珍しく晴れた空の下、古く趣のある教会から少し離れたベンチに二人は腰を下ろした。するとマリアが魔法でマグルに気づかれないよう、温かい紅茶の入った紙カップを出してくれた。それを二人並んで飲みながら往来を見つめ、フォーラが先程の続きを話し始めた。
昨年度の終わりにドラコに告白されたことや、今年は冷たく当たられていること、不死鳥の騎士団のことがバレているわけではないこと……。今回のようなフォーラにとって両親に話すのは気が引ける恋愛じみた内容でも、マリアには話すことが出来た。それはフォーラがマリアをある意味本当のお姉さんのような存在として認識している部分があったからだった。

「そうですか……そんなことが。どおりでお嬢様のお顔が暗い筈です」

「やっぱり気づいていたの?」

「当然です。ホグワーツへお出かけになる時はあんなに元気になられていたんですから。
でも正直なところ……お嬢様がもう血縁のことでお悩みでないと分かって本当によかった」

「え……。そんな、そのことはもう少しも気にしていないわ。本当よ?」

真剣にそう伝えてくるフォーラを見て、マリアは彼女に優しく微笑んだ。

「ええ、そのようですね。お嬢様を信じられないなんて随分愚だとも思いました。
ですが、お嬢様がホグワーツに行かれて少ししてから今日まで、ずっとその事ばかり考えていました。以前のように旦那様や奥様、私達からいつ離れていってしまうかと思うと気が気ではありませんでした」

マリアは優しくも少し寂しげな微笑みをこちらに向けた。そして直ぐ神妙な面持ちで話題を元に戻したのだった。

「それにしても……。ドラコ様のことについては、お話を聞く限り私もお嬢様のご友人と同じ意見ですね。ドラコ様がふられた腹いせにお嬢様に八つ当たりしている可能性は捨てきれません」

「そう……。だけど、そのことはドラコに自惚れるなと言われてしまったわ。それにドラコにはもうガールフレンドがいるの。
だから私のことはもうなんとも思っていない筈だし、嫌いな感情だけが残ってしまったのかもしれない。」

「そうですか……。ですが、先程ドラコ様が誰にでも八つ当たりしていると伺いました。そうなると何か他に原因があるとも考えられませんか?八つ当たりせざるを得ない何かが……」
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