不死鳥の騎士団

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「え・・・・」

フォーラが目の前の出来事に呆然としていると、ルーピンがすぐに屈んで彼女の肩を両手でしっかりと抱いた。

「フォーラ!大丈夫か?」

フォーラはルーピンの方を見ると、もう一度先程まで両親が倒れていた辺りに視線を戻した。そしてもう一度ルーピンを見て、彼女はようやく先程の両親の正体が『まね妖怪のボガート』だった事に気がついた。そしてそれと同時に彼女の瞳からはボロボロと涙が溢れ出していた。

「フォーラ、もう大丈夫だ。ただのボガートだ」

ルーピンはフォーラを落ち着かせようと彼女の頭を数回撫でた。すると彼女はその安心感からか先程よりも涙を溢れさせ、ルーピンのローブにしがみついて彼の胸を借りながら声を出して泣いた。ルーピンはそんな彼女を只々受け入れ、抱擁した。そして彼女が落ち着くまで頭を撫で続けたのだった。

それから少し経ち、フォーラはようやく落ち着きを取り戻してルーピンから離れた。まだ鼻をすすりながらではあったが彼女は何とかお礼の言葉を口にした。

「あの、あ、ありがとうございました、本当に。
私ーーーーその、ルーピンは、どうしてここに?
最近は、ずっと騎士団のお仕事で外出していると聞いていたから・・」

ルーピンは床にしゃがみ込んだままのフォーラの隣に座りなおしながら言った。

「先程仕事が終わってようやく戻ってこられたんだ。それで自室に戻ろうとしていたら、君の声が聞こえた」

確かにルーピンの顔はいくらかやつれていたし、少しくたびれた余所行きのローブを羽織っていた。彼の側には旅行用鞄が転がっている。そしてフォーラは仕事帰りの疲れている時にこんな事に巻き込んでしまったことを謝った。

「なんて事はないさ。君が無事で良かったよ。
それにしても、なんというか・・・恐ろしい光景だったね。あれは君のご両親だっただろう」

フォーラは小さく体育座りをしてルーピンを見た後、ゆっくりと頷いた。

「私、今の今まで自分にとって何が一番恐ろしいのか気づけませんでした。だからあれを見てパニックになってしまって、ボガートだって分からなかったんです。
せっかく授業でルーピンに教えてもらったのに・・・本当にごめんなさい。」

フォーラは先程まで両親の姿をしたボガートが倒れていた辺りを見ながら続けた。

「私、ルーピンの部屋でお話しした日から、なるべく不要なことは考えないようにしていたつもりでした。でも、あまり上手くいかなくて。
ふとした瞬間に、沢山今までの事を思い出したりしていました。この間ハリーがやってきた日に、あなたに引き止められた時も・・。」

「あの時のことは、私も君に随分無理強いをしてしまった。すまない事をしたと、ずっと考えていた」

フォーラがルーピンを見やると二人の目が合った。ルーピンはそのまま続けた。

「君がここに来て初めて私に本当の気持ちを打ち明けてくれた日、私は君に『私がついている』と話したね。必ずなんとか出来ると」

フォーラは静かに頷いた。ルーピンはほんの少し苦く微笑んだ後で、自責の念に駆られた表情も覗かせた。

「だが実際は任務に追われて君に何かしてあげることが出来なかった。だからハリーが来た日の夜、私は焦って君を引き止めてしまったんだ。その時のフォーラは随分怯えていたから・・私は間違えたと思った。でも反対に、少しでも君の刺激になればいいと思った。
君に両親のことをここでは忘れろと伝えたのにね。私はフォーラにどうしてやればいいのか分からずにいたんだ」

フォーラは思わず首を振って彼の言葉を否定し、声を荒げていた。

「そんな。あなたはいつも私を気にかけてくれているのに。
あの時だって、ルーピンに引き止められたから、だから私は両親のこと・・・」

フォーラはそこで言葉を切ってしまった。そんな彼女を見て、ルーピンは内心少し驚いた後で彼女に優しく微笑んだ。先程のボガートの姿然り、きっと彼女はもう自分の中で殆ど答えを見つけているのだと感じたからだ。
そしてフォーラは再び言葉を紡いだ。
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