不死鳥の騎士団

□unexpected side
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自分の本当の親は誰で、今何処にいて、どうして自分を手放したのかを考えたことがないわけではなかった。むしろクリーチャーに『親なし』と罵られて以来、何故かその事がたまに頭をよぎった。真相を知ったからといって勿論どうなるわけでもないし、もしかしたらもうとっくに死んでしまっているかもしれない。
生みの親はどちらもマグルだと聞いている。もし自分がマグルの両親と過ごしていたとしたら、きっと今のような悩みを抱えることもなかっただろう。魔法界のことも何も知らずに学校へ招待され、特別スリザリンを希望することなく他の寮に入る。もしかしたら毎日ハーマイオニー達と一緒に過ごしたりして、そして、ドラコや周りの皆んなとは接点もなく、スネイプと両親が家で話す姿を見ることもなく・・・。

「・・・。」

彼女は形容し難い猛烈な嫌悪感と虚無感に襲われた。だがその意味を考える前に自分が酷く馬鹿げていると思った。そもそも"もし"などというのは有り得ないのだ。こんな無意味なことを考えていたとルーピンに知られたら、きっと叱られてしまうかもしれない。

フォーラは頭の中の出来事をかき消すように意識を引き戻すと、食べ終わった朝食の食器を片付けにシンクへ向かった。すると先程からキッチンカウンターの向こう側でモリーがシリウスの側で彼と話しながら何かをしており、フォーラはようやくそれが何なのかが見えた。
モリーは医療用の本の"瘡蓋粉"と書かれたページを見てはシリウスの瘡蓋だらけの右手を眺め回していた。

「もう一週間になるでしょう。少しは良くなったと思ったけど・・。ここに書いてある通りに作ったのに」

「もしかしたら変な呪いでも掛かっていたかもしれないな。強化魔法とかそういうのが」

フォーラは二人を横目に見ながら食器をシンクに置いた。シリウスの直ぐ側に解かれたばかりの包帯が散らかっていて、その隣にはボウルの中に黄色がかった透明の液体が入っていた。彼はそのボウルに瘡蓋だらけの右手を浸けているところだった。シリウスは気怠げに言った。

「まあ良くはなってるんだ、気長に待つことにするよ。ありがとうモリー。それにどうせ私は騎士団の皆んなの様にこの屋敷からは出られないんだから」

「・・あの、すみません、それって?」

フォーラは二人の横から声をかけた。どうしてもシリウスの使っているボウルの中身が気になったのだ。するとモリーが説明してくれた。

「シリウスの瘡蓋を治すのに効くらしくって。買ってきた本を見ながらシリウスと作ったのよ。
でもなかなか思うよう治らないの」

それを聞いてフォーラはボウルに近づくと中をジッと眺めて再び尋ねた。

「中身は何が入っているんですか?」

「マートラップのエキスと、トウガラシと・・他にもここに書かれているものが入っているわ」
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