炎のゴブレット

□primerose:second volume
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ドラコは無理矢理フォーラの手を取ってしまったことを心配していたが、彼女に嫌がる素振りがないのを見て安心したようだった。

(自分が手を繋ぎたいだけのくせに、よくもまあフォーラのせいに出来たものだ)

彼女のさらりとした肌の感触と多少の罪悪感を手の内に感じながら、ドラコは今はその罪悪感を取り敢えず置いておくことにした。嬉しくて、緊張して、それどころではなかった。



二人は三本の箒で今まで頼んだ事のないデザートとドリンクを堪能した。こうして二人で過ごしているとまるでデートをしているようだと思ったし、まだもう少し二人きりの時間があるということに心踊った。自然とお互いがいつも以上に笑顔になっていて、自分がそうなっていることに自覚こそなかったものの、相手が喜んでくれているのは目に見えてわかって嬉しかった。

周りから見れば"良い雰囲気"の一言が一番しっくりきた。それはフォーラのことを慕う人から見ても間違いなかった。

(二人で出かけてるのか。珍しいな)

ジョージはフレッドとリー・ジョーダンと共にそろそろ三本の箒から次の店へ移動しようというところだった。三人とも椅子から立ち上がったが、ジョージだけが離れた席のフォーラとドラコに気を取られて動かなかった。

「?おい、ジョージ!行くんだろ?」

一向に出口に向かおうとしない彼に、フォーラに気付いていないフレッドが声をかけた。ジョージは我に帰ると直ぐに返事をして店を出たのだった。

フォーラの事は気にしない。例え誰かとーーードラコ・マルフォイと良い関係になろうともだ。自分に彼女の気持ちが向いていない事もわかっている。

(なのに・・・)

フォーラから目が離せなかった理由はよくわかっていたが、彼は気づかないフリをしていた。頭ではフォーラが好きな人と幸せになれればいいと思っているのに、今見た光景でその気持ちが自分宛でないのが改めてありありとわかって胸が締め付けられた。自分はダンスパーティの日に諦めた筈なのだ。

(俺は・・・確かにあの時決めただろ。フォーラの事は追いかけない。今は当面の目標に向かって頑張るだけだって)

しかし、彼自身その様に想い人の幸せを一番に願って自分を聖人のように見せかけても、そんな風に振る舞える人間がこの世にいる筈のない事くらい知っていた。そして、彼も漏れなく例外ではなかったのだ。
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